技術開発や実験より
NTTへの書類出しが難関
役人は声を震わせながら答えた。
「調査します」
果たして、その日の夜中、役人から電話があった。
「NTT東日本からダークファイバー数本が出てきました」
そしてNTTからは孫に会いたいという連絡が入った。
孫はNTTの官僚体質に憤慨していた。何しろユーザーを待たせている。
「われわれにとっていちばんむずかしかったのは、ネットワークの技術開発や実験ではなくて、NTTへの書類出しです。たとえば、1文字書き間違えると、それだけでまた2ヵ月待つといったぐあい。電源もあるのに、ないと言う。そこでわれわれは自前で電源工事をした。結局、全部設計のやり直しだったが、すると2週間ですべてが終わった。でも彼らは、そんなことをしたら3ヵ月もかかると言う。おかしいじゃないですか!」
NTTとの戦いの日々。孫は夜中の3時、4時まで、土曜も日曜も盆も正月もなく働いた。
まさに20年前の創業時と同じ、昻揚感に満ちていた。
「会社に命を賭けてやっているんです。お客さんを待たしてるからつながなきゃいけないんだということで、銭金は関係ない。損得も関係ない。なんぼ赤字出してもかまわない」