写真:JA共済ビルPhoto by Hirobumi Senbongi

JAグループの全国組織が役員の改選を行った。経営者の若返りを目指す従来の流れに逆行し、70~80代の役員が結託して多数続投した。共済(保険)の自爆営業を強いられてきた地域農協の職員は、上部団体に身を切る改革を求めている。だが、今回のトップ人事に、そうした期待に応えようとする姿勢は見えない。老害リーダーが保身を続ける限り、農家や農協職員から見放されることは必至だ。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)

“農協のフィクサー”が暗躍し、世代交代を阻止
自身も重要ポストを続投し影響力を維持

 まさに 組織としての“終わりの始まり”の人事と言っていいだろう。JA共済連、JA全農、JA全中などJAグループの全国組織が7月に行った役員人事のことだ。

 今回の人事では、複数の70~80代の役員が「談合」によって、若手のリーダーがトップに立つのを阻止したり、本来、不正の責任を取って退任すべき会長が、自らの定年を延長してまで留任したりと、保身ばかりが目立った。

 ある農協幹部は、「上部団体は、生産コストを農産物価格に転嫁できず苦しんでいる農家や農協の窮状を理解しているのか。このような人事をやっていては、組合員や農協職員からそっぽを向かれてしまう」と危機感をあらわにする。

 実際、農協の経営は苦しい。ダイヤモンド編集部の試算で、全国約550JAのうち、157JAが5年後に赤字に転落することが分かった(詳細は、特集『儲かる農業 下剋上 ピンチをチャンスに』の#1『157農協が赤字転落!JA赤字危険度ランキング2023【全国ワースト512・完全版】』参照)。

 今後は、共済(保険)の自爆営業(ノルマ達成のため職員らが本来不要な契約を結ぶこと)を自粛せざるを得ないことから、農協の経営がさらにひっ迫することは避けられない。

 次ページでは、農家や農協の切実な声に耳を貸さず、共済連、全農、全中が行ったトップ人事の裏側を徹底解説する。