農協の大悪党 野中広務を倒した男#6写真提供:卸売事業者

JAグループ京都を26年以上にわたって牛耳ってきた中川泰宏は、農家らの出資でできている農協組織を私物化してファミリー企業への利益誘導を行っている。連載『農協の大悪党 野中広務を倒した男』の#6では、中川が会長を務めるJAバンク京都信連から2億円超の融資を受けて農協から購入した土地で「地上げ」を行った衝撃の事実とその顛末を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)

最高裁で違法と判断された地上げに
JAバンク京都信連が2億円を融資

 中川泰宏が主導した農協の労働組合潰しのように(詳細は本連載#5『JA京都の労組潰しは農協界のドンの「恐怖支配」を象徴、農業よりリストラ優先の本末転倒』参照)、彼の強引な行動は時として法に触れることがある。

 だが、労組が法廷闘争に7年以上の歳月を要したように、中川を相手に“社会的な決着”をつけるには長い年月とコストを伴う。そのため多くの場合、被害者は泣き寝入りせざるを得ないとみられる。

 しかし、そうしたリスクを覚悟して法廷闘争に臨み、勝利したケースは労組以外にも存在する。以降では、中川の親族が役員を務めるファミリー企業が悪質な地上げを行い、最終的に裁判で敗訴に追い込まれるまでの顛末を紹介する。

 地上げには、中川が会長を務めるJAバンク京都信連や、JAグループの旅行代理店である農協観光などが加担した。JAグループの組織が中川の意のままに操られ、ガバナンスが全く働かなくなっていることを象徴する事件である。