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岸博幸のクリエイティブ国富論

IT戦略で日本の遥か先を行くラトビア

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
2013年4月26日
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ITで民主主義の仕組みを変えたラトビア

 ここで、上記のIT担当大臣の資料や政府が来月まとめるIT戦略がいかに“改革”とはほど遠い矮小なものであるかを理解していただくために、ヨーロッパの小国ラトビアでの世界最先端と言えるIT活用の取り組みを紹介しましょう。

 ラトビア共和国は人口わずか222万人(2011年)という小さな国ですが、かつてはソビエトの一部であったなどの歴史的な背景もあり、これまで国民の政治への参加や政府への信頼が低かったのですが、あるウェブサイトがこうした状況を変えつつあります。そのウェブサイトは“ManaBalss.lv”(英語にすると“My Voice”)と言います。

 このサイトの仕組みを簡単に説明しますと、ラトビア国民なら誰でもこのサイトにラトビア議会への提案を投稿できるのです。もちろん提案内容が合法的なものであり、かつ解決策とアクションプランを提示しないといけないのですが、ボランティアの専門家が提案内容をフォーマルな議会提案とするにはどう修正すればいいかアドバイスしてくれます。その上で、提案内容について100人の国民が同意し、かつボランティアの弁護士が実現可能と判断したら、提案内容はこのサイト上で一般に公開されます。

 そして、サイト上で16歳以上のラトビア国民の署名が1万集まった提案については、本当にその内容がラトビア議会で検討されるのです。ちなみに、署名は電子署名で行なわれ、ラトビア国民がネット・バンキングで使っているIDなどで認証されます。

 このManaBalssには2011年の開設以来、人口の4分の1以上である60万人以上のラトビア国民が訪れ、約500の提案が公開され、合計で約18万の署名がされています。7つの提案については1万以上の署名が集まって実際に議会に提案され、そのうち2つについては立法措置が取られ、もう2つについては現在議会で検討されているとのことです。

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岸 博幸
[慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。


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メディアや文化などソフトパワーを総称する「クリエイティブ産業」なる新概念が注目を集めている。その正しい捉え方と実践法を経済政策の論客が説く。

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