日本では不可能なメカニズムが働いているという意味で、アメリカは無限の可能性を持った社会だ。
アメリカは、もともと移民が作った国だ。そして、多数の有能な人々を引きつけてきた。第2次世界大戦の初期の段階においては、ナチによる迫害を逃れてヨーロッパからアメリカに亡命した科学者が、アメリカの科学基盤を強化した。
それに対して、非寛容主義は、現代社会では馬鹿げたほどに高くつく。ナチの劣等民族根絶政策の最も大きなコストは、優れた科学者がドイツや近隣諸国から逃げ出したことだ。彼らの多くはアメリカに渡り、アメリカの科学技術水準を短期間のうちに急激に向上させた。
それだけではない。民衆が離反したのだ。ナチの軍隊がソ連領内に侵攻した最初の段階では、ドイツ兵士は解放者として歓迎されることもあった。その傾向は、ソ連政府から抑圧を受けていたウクライナやバルト三国において、とくに顕著だった。ロシアでさえ、ボルシェビィキからの解放を約束すれば、民衆はナチ側についた可能性があったと言われる。
だがナチは、ウクライナのユダヤ人を絶滅に近いほどまでに殺害した。非ユダヤ系のウクライナ人も、500万人ほど殺害した。