例えば息子のナラティブとしては、「突然、お父さんに、持ち上げられた。花火がよく見えたのは嬉しかったけど、友達に見られるかもと思ったら、恥ずかしくなった」と語るかもしれません。
また、その親子の真後ろを歩いていた若いカップルのナラティブとしては、「彼女とのデート。彼女の浴衣姿がきれいだ。それにしても、せっかくいいムードだったのに、いきなり目の前のオッサンが息子を肩車しだしたから、ぜんぜん花火が見えない。めちゃくちゃ邪魔だ。もし結婚して子どもができても、周りに迷惑をかけていることに気づかないオヤジにはなりたくないな」なんて物語が紡がれるかもしれません。
ボクのおとうさんは、桃太郎というやつに殺されました。
(2013年度新聞広告クリエーティブコンテスト テーマ:しあわせ/山﨑博司)
これは、2013年の新聞広告クリエーティブコンテスト最優秀賞となったコピーです。まさに桃太郎のめでたしめでたしでさえ、立場を変えてみると悲劇でしかないのです。
このように「ナラティブを紡ぐ」と捉えると、「自分はつまらない平凡な日常しか送っていない」なんて卑屈にならなくても、ちょっとした物事から無限の物語が生まれる可能性があることに気づくでしょう。だから難しく考えずに、自分の物語を紡いでほしいのです。