「リーダーは絶対読むべき本」「被害者や加害者にはならないためにもできるだけ多くの人に読んでほしい」と話題沸騰中の本がある。『それ、パワハラですよ?』(著者・梅澤康二/マンガ・若林杏樹)だ。自分はパワハラしないから関係ない、と思っていても、不意打ち的に部下からパワハラで訴えられることがある。本書は「そんなことがパワハラになるの?」と自分でも気づかない「ハラスメントの落とし穴」を教えてくれる。著者は人事・労務の分野で約15年間、パワハラ加害者・被害者から多数の相談に乗ってきた梅澤康二弁護士。これを読めば「ハラスメントの意外な落とし穴」を回避できる。今回は特別に本書より一部抜粋・再編集して内容を紹介する。

【部下がドン引き】飲み会で上司がつい言いがちなパワハラ発言ワースト1Photo: Adobe Stock

「飲みの場なんだから何を言ってもいい」は間違い

平成までは、「飲み会の場は無礼講」などといって、ずいぶん無茶な飲み会が行われていたように思います。

飲み会で誰かが酔っ払いすぎて粗相したり、セクハラ的な言動があったりしても、後日グチグチ言うのは野暮というような風潮もありました。

飲み会で不快なことが起きても、我慢するのが当然だと思っていた、という人は多いのではないでしょうか。

たしかに飲み会は職場そのものではありませんが、だからといって何から何まで許されるのでしょうか。

当然そんなわけはなく、飲み会でもやってよいこととダメなことは当然あります。

飲み会は「職場の延長」とも捉えられるケースも

まず、飲み会という場を法律的にどう捉えるべきかですが、飲み会は通常は懇親を深める場であって、仕事をする場ではありません。

そのため、任意参加の飲み会の場は、「職場」ではないのです。

しかしながら、任意参加の飲み会でも会社内の人間が複数参加するものは、職場での人間関係がそのまま飲み会に持ちこまれる余地が多分にあります。

飲み会での出来事が職場にも何かしら影響を及ぼすこともあるでしょう。

そのため、任意参加の飲み会でも「職場の延長」と捉える余地はあります。

そして、職場の延長となりえる場でハラスメント行為が行われれば、職場のパワハラやセクハラと同列に考えることは可能です。

このような観点から、事例を見ていきましょう。

飲めない人にお酒をすすめる行為はアウト?

【事例】
20代男性。職場の飲み会でお酒を飲めないと言っているのに、上司や先輩から「この程度で情けない。もっと飲んで強くならないと!」「飲んだほうが酒に強くなる」と言われた。どうやって断ればいいのかわからない。

【解説】
飲酒をすすめる行為自体は、常識的な範囲内であれば何も問題ありません。

しかし、

・そもそも酒が飲めない相手に「そんなはずはない」とか「俺の酒が飲めないのか」などと言って飲酒を強要する行為

・すでに酩酊状態の相手に無理に酒を飲ませ続ける行為

これらの行為は、「常識的な範囲を超えている」と評価される余地が多分にあります。

職場の上司・部下が飲み会に参加する場合、職場内の序列がそのまま飲み会の場に持ちこまれることは、想像に難くありません。

この場合、部下からすれば、「たとえ飲み会でも上司をないがしろにしたり、無視したりするのはご法度」と考えるかもしれません。

そうすると、たとえ任意参加の飲み会であっても、上司が部下に対して理不尽な要求をする行為は、職場でのパワハラと同列に扱う余地は多分にありそうです。

今回のケースのように、上司が部下に対して常識の限度を超えて飲酒を強要する行為は、業務との関連性も業務上の必要性もいっさい認められません。

やっている行為も非常識であり、業務上適正な範囲を超えたパワハラと評価される余地は十分にあるといえます。

『それ、パワハラですよ?』では、「そんなことがパワハラになるの?」という意外なパワハラグレーゾーンの事例を多数紹介。上に立つ人はもちろん、すべての働く人が読んでおきたい1冊。

[著者]梅澤康二
弁護士法人プラム綜合法律事務所代表、弁護士(第二東京弁護士会 会員)
2006年司法試験(旧試験)合格、2007年東京大学法学部卒業、2008年最高裁判所司法研修所修了、2008年アンダーソン・毛利・友常法律事務所入所、2014年同事務所退所、同年プラム綜合法律事務所設立。主な業務分野は、労務全般の対応(労働事件、労使トラブル、組合対応、規程の作成・整備、各種セミナーの実施、その他企業内の労務リスクの分析と検討)、紛争等の対応(訴訟・労働審判・民事調停等の法的手続及びクレーム・協議、交渉等の非法的手続)、その他企業法務全般の相談など。著書に『それ、パワハラですよ?』(ダイヤモンド社)、『ハラスメントの正しい知識と対応』(ビジネス教育出版社)がある。