若い世代のオープンさが
そのまま付け入る隙になる

 先に紹介した調査では、大学生より高校生の方がSNS経由でバイトを経験した人が多かった。ネットで得られる情報によりオープンに接している点はメリットだが、きちんとした危機管理意識に裏打ちされたものでもなさそうなので、その脇の甘さは正されるべきデメリットである。

 筆者(40代)はソシャゲやらゲーム配信やらを通して、小学生から中高年まで幅広い年齢の人たちとやり取りするが、若い人ほどピュアにネットに接している印象がある。

 筆者と同等か、それ以上の年代はネットに対して根本的な警戒心や緊張感、もっというと決して拭い去れない猜疑心を持っている。ネットショッピング全盛のこの時代にあっても「怖いからネットを通じて買い物をしたことは一度もない」という人を知っていて、その感覚がわからないでもない(そういえば、自分も初めてネットで買物したときはこわかった)。

 一方その猜疑心は、若い世代にはない。ネット上で若者から話しかけられて、内容的にケンカになるかと身構えるも、相手はただ疑問を口にしただけで、こちらの立場を説明するなりして納得してもらったことは一度や二度ではない。筆者ほどの警戒心を、若い世代はネットに持っていない。ピュアでオープンマインドである点は美徳だが、そこが闇バイト募集が付け入る隙にもなりえてしまっている。

 闇バイトはたいてい「高額報酬で計算がざっくばらん(時給でなく「1件〇万円」など)」「仕事や待遇の記載に具体性がない」「“ホワイト案件”などの文言」「連絡はDM」といった特徴があるので、少し気をつければ見極められるはずだが、実際にDMしてみると窓口担当がものすごく丁寧で、「登録のために個人情報を送ってください」などと言われ言う通りにすると、今度はその個人情報をもとに「仕事を断れば家族に危害を加える」などと脅して断りにくくさせ、犯行の加担を成立させるのが一般的な手口である。

 社会経験が少なく窓口が丁寧というだけでコロッと騙されてしまう点、家族をダシに使われて冷静な判断を奪われてしまう点は、特に若い人に顕著に想定される弱点なので注意されたい。

 横浜市青葉区の実行犯3名のうち1名はすでに実名報道されていて、家族や知人のインタビューも出ているが、それを読む限りでは強盗殺人にはほど遠そうなキャラクターだ。しかし、そんな彼らが犯罪に加担したという事実は、「家族に危害を加える」という脅迫はそれくらいの強制力があり、闇バイトの恐ろしさと、その脅威が他人事ではなく日常のすぐ隣にあることを伝えている。