実際、彼の推測は当たっていた。のちにマクドナルドをはじめとする外食産業のミキサーは全自動式のものが中心となり、クロックの販売していた旧式のミキサーは使用されなくなるが、ハンバーガーを売るファストフード店は世界を席巻していくのである。
取引先の売り上げを伸ばす方法を提案
クロックは根っからのセールスマンだった。20歳の時にリリー・チューリップ・カップ社で紙コップを売るセールスマンとなる。途中ピアノ奏者をめざしたり不動産業に手を出したりした時期もあったがそれでは生活をしていけず、ここで彼は社内きっての敏腕セールスマンとしての腕を存分に発揮していく。
クロックのセールスの手法はただ取引先に出向いて注文を取るだけではなかった。彼は取引先の売り上げを伸ばす方法を常に研究し、それを先方に提案した。取引先の売り上げが伸びれば伸びるほど紙コップの受注も増えるからだ。これはマクドナルド兄弟の店の店舗数を増やしてミキサーを拡販しようと考えたのと同じである。
たとえば彼は、得意先のチェーン店がランチタイムには満席となり客がさばききれないのを知ると、テイクアウトサービスを始めるように提案する。
最初は乗り気でなかった店側もクロックの粘り強い説得に根負けし、一度試してみる。すると上々の結果が出て全店でサービスを実施することになり、クロックの営業成績も格段に伸びるというわけだ。