「あと回しグセ」のせいで
だらしない人と思われてしまう

 Hさん(40歳)は仕事の進め方に極端なところがあります。自分がおもしろいと思うことをまず優先してやってしまい、その他のやるべき作業をバランスよく進行させることができませんでした。徹夜続きでなんとか仕上げようとしましたが、納期に間に合わなくなってしまったのです。

 このように、おもしろくないけれどもやらねばならないことをあと回しにしてしまうのは、ADHDの人の脳の特性「あと回しグセ」のためです。こうしたことは定型発達の人にはなかなか理解してもらえず、周囲からはだらしがないと思われたり、あきれられたりしてしまうこともあります。

▼Hさん(40歳・男性)の場合

Hさん(40歳・男性)の場合同書より転載

「やる気スイッチ」は脳内にあり、そのスイッチを押すのはドーパミンなどの神経伝達物質が関係します。ところが、ADHDの人はこの働きが気まぐれ。自分がやりたいことや、目先のことにはスイッチが入りますが、やるべきことには、本人はわかってはいても、なかなかスイッチが入らず、行動に移すことができないのです。これは、知性や人間性の問題ではなく、脳の機能のアンバランスによるものなのです。