ここ10数年ですっかり世に浸透した「発達障害」。しかし第一人者によれば、未だに適切な診断・治療が行われているとは言い難く「権威でも誤診するケースは多い」という。特集『選ばれるクスリ』(全36回)の#12では、昭和大学烏山病院の岩波明院長が、日本における発達障害治療の大問題を説く。(ダイヤモンド編集部 野村聖子)
ADHDで薬物治療が施されない裏に
自閉症スぺクトラム障害との誤診
われわれ精神科領域では、臨床試験で有効性が認められている薬でも、いざ現場で患者さんに処方してみると効果がないケースが少なくありません。
例えばうつ病の場合、外来の患者さんで抗うつ剤が著効するケースは残念ながらその3~4割というのが、現場の精神科医の実感です。一方で、ADHD(注意欠如多動性障害)は、薬物療法が最も奏功する疾患の一つです。
しかし、誤診によって適切な投薬がされていないケースが数多く見られ、最も多いのは同じ発達障害の一種で、アスペルガー症候群などを含む「ASD(自閉症スぺクトラム障害)」と誤診されているケースです。