しかし1961年に、天才的なライターで口八丁のセールスマンでもあるスタン・リーと、働き者で天才的なアーティストのジャック・カービーが手を組み、ファンタスティック・フォーというスーパーヒーローのチームを創造した。

 突拍子もないSF冒険譚と家族喧嘩が組み合わさったファンタスティック・フォーは、DCのコミックスに欠けていた活きの良さとノリを持っており、刊行と同時に大人気を博した。

 そしてマーベルはすぐに何十ものコミックスを刊行し、やがてはスパイダーマンやアントマン、そしてアイアンマン(加えて女性ヒーローも数名)を含む何百ものスーパーヒーローを擁するにいたった。その後数十年の間に、マーベル・コミックス・グループはスーパーヒーロー文化の王国に成長した。

 重なりあいながら語られる何千もの物語。別々の物語世界で自在に客演しあうキャラクターたち。ニューヨークの下水道から外宇宙の果てまで広がる、それは気が遠くなるほど精巧に織りなされた、現代の一大叙事詩だった。