僕が日本の教育においてもっとも危惧しているのは、根拠なき精神論がまん延していることです。

 少し前の話になりますが、象徴的な例がありました。

 2019年10月17日、神戸市教育委員会は、市立小中学校の運動会・体育大会での組み体操で、「今年度に骨折6人を含む66件の事故が発生した」とする最終集計をまとめ、市総合教育会議に報告しています。

 同市の組み体操を巡っては、久元喜造市長が市教育委員会と学校に中止を要請しましたが、教育委員会はすぐには応じず、「安全性に十分配慮した上で実施する」として対立が続いていました。

 しかし、事故の集計結果を受けてようやく、同市教育委員会は「運動会・体育大会における組み体操の禁止」を通知するに至りました(2019年12月20日)。ここまでで何と2カ月も費やしています。

 組み体操については、1年間で数千人がケガをしているというファクト(事実)があり、国連の「子どもの権利条約」委員会も問題視しています。また、大阪経済大学の西山豊名誉教授が日本スポーツ振興センターのデータを分析したところ、2018年までの3年間に、全国の学校で145件の事故が起きていることがわかっています(参照:NHKオンライン「組み体操『人間起こし』全国で事故多発 専門家『非常に危険』」2019年11月20日)。