最初にコンタクトする面接官の人間的な魅力がその企業の顔になってしまうのだから、それなりの人材を配置すべきであることは言うまでもない。そういう意味でも、経営者は絶対的に現場の採用担当者の能力を把握しておくべきである。
そして、その採用担当者が自社のことを心から好きで、企業理念を正しく理解し、理念に深く共感していることを確認しておくべきである。もしもそうではない人材が現場の採用担当をやっていたら、即刻、異動させるべきである。
「採用はご縁」信じる企業の末路
理念がしっかりと腹落ちしている社員は、マニュアルにこだわって不適切な行動をすることがない。臨機応変に相手の出方に応じた面接ができるはずだ。そして、「これは!」と思う人材がいたら、その後のステップを飛ばしてでも経営者に報告を上げてくるだろう。
現場の採用担当として最良の人材を配置することは、採用活動における経営者の最大の仕事である。
そして、大企業に比べて経営者と現場の採用担当者の距離が近い中堅・中小企業は、「マニュアル通りのおざなりの面接」をしないことによって、採用活動における一発逆転を狙えるのだ。
「あの会社の面接、おもしろい。ワクワクする」といった噂がSNSなどで広まっていけば、良質な人材を数多く採用できる可能性が広がっていくだろう。
では、採用に関して経営者がやってはいけないこととは何だろうか。それはひと言で言って、「昔と今の採用はまったく違う」という事実を理解しないこと、である。
前回述べた通り、現代の採用マーケットは人材会社や転職エージェントが幅を利かせている。彼らはインターネットを駆使して、自社のサイトに学生を誘導し、さまざまな情報を与えることによって、自社にとって都合のいい振る舞いをさせようとする。
それは決してほめられたビジネスではないと私個人は思うが、採用マーケットで彼らの存在を無視することは、もはや不可能である。経営者は彼らの振る舞いを熟知した上で、自分たちなりの特色を打ち出して、求める人材を確保することを考えなくてはならないのだ。
にもかかわらず、いまだに「採用は縁だ」とか「採用はお見合いだ」などと言ってはばからない経営者が多いのも事実だ。こうした間違いを自ら正すためにも、経営者はとにかく採用の現場に出て行って、そこで何が起きているのかを見るべきなのである。
最後にもう一点だけ、経営者がやるべきことを指摘しておこう。それは、「時流を知る」ということだ。