開票が進むにつれてハリスの劣勢が徐々に明らかになっていく。それでも支持者の多くは、「当落が決まるまでには時間がかかる」とのメディア予測を信じて、夜の11時すぎには家路につき、ロックフェラーセンター前は人が少なくなっていった。

 アメリカの主なメディアが「トランプ勝利」の可能性に言及し始めたのは、それからわずか数時間後のことだ。残った支持者の中で、「うそでしょう?早すぎる」という声と、すすり泣く音が交錯した。

 一方、会場からほど近いトランプタワーの前では、「MAKE AMERICA GREAT AGAIN」と書かれた赤い帽子姿のトランプ支持者たちが、スマホで開票速報を確認しながら、歓喜の叫びを挙げていた。

 タワー周辺は、ニューヨーク市警が、トランプが敗北した場合の暴動に備え、鉄柵で囲うなどしていたが、「トランプ当確」が出ると、その厳戒態勢は杞憂に終わった。「トランプが勝ったことで、映画『シビルウォー アメリカ最後の日』のような分断を象徴する暴動は免れた」と少しだけ安堵した。

 筆者は、同じくニューヨークで取材した2000年のブッシュ対アル・ゴアや2016年のトランプ対ヒラリー・クリントンの選挙戦を思い出していた。

 そのとき以上に接戦が予想されていたにもかかわらず、異例の早さでの決着。前回、数々の訴訟に発展した反省を踏まえ、開票作業が正確でスピードアップしたことに加え、「それだけトランプが強かった」と結論づけるしかなかった。

アメリカの有権者は
「自分ファースト」

 筆者は、10月29日と選挙当日の11月5日(日本時間6日)、出演したTBSラジオ「生島ヒロシのおはよう一直線」で、「トランプが勝つ」と言い切るほど、トランプの勝利を確信していた。

 物価高に苦しみ、移民という安い労働力に仕事を奪われてきたアメリカの有権者にとって、最大の関心事は、毎回、「自分の手取りをいかに増やすか」だ。

 ハリスが芸能界のセレブを総動員して強調してきた「人工中絶の権利擁護」や「民主主義の奪回」も確かに重要な争点なのだが、投票行動の決め手となるのは、「仕事」であり「お金」だからだ。