トランプの4年間で
変わる国際社会
トランプ政権で何が変わるのかについては、すでにさまざまなメディアで予測がされている。筆者も、当面、以下のような影響が出るものと考えている。
〇ウクライナ戦争を(早ければ大統領就任前にでも)終結させるため、ロシアのプーチン大統領とディール(取引)する ⇒ 最悪の場合、ウクライナが負ける
〇イスラエル寄りの立場を示す ⇒ イスラエルへの武器供与を継続する
〇トランプは「タリフマン」(関税男)。中国からの輸入品に60%の関税、メキシコからの輸入品に100%の関税、日本などからの輸入品に10%の関税をかける ⇒ 中国との貿易戦争が再燃し、メキシコで自動車を組み立てている日産やマツダなどが打撃を被る、他の日本の輸出産業にも影響が出る
〇円高ドル安に誘導する ⇒ 現在の円安ドル高を「大惨事」と評していたため、アメリカの輸出産業が儲かるよう、為替相場にコミットする
〇パリ協定から脱退し、EV(電気自動車)推進方針を転換 ⇒ 環境対策は軽視、化石燃料を掘り、ガソリン車製造推進に切り替える
他に、日本製鉄が買収を目指すUSスチール問題で、どう出てくるか、日本の防衛についてどのような注文をつけてくるかなどは注視しておきたい。
ただ、これらの中には、日本にとってプラスになる面も多々ある。ウクライナ戦争やイスラエル問題が前進しなければ、小麦粉やガソリン価格は下がらない。国内経済が厳しい中国がアメリカとの対立で苦しくなれば、台湾有事や日本有事のリスクが軽減される。「カネを払えば、中国や北朝鮮から守ってやる」と言うのであれば、それはそれでわかりやすい。
円ドル相場が1ドル=120円あたりまで円高になれば、輸入品が値下がりし海外旅行にも行きやすくなる。EVへの転換が先送りされれば、日本の自動車メーカーもひと息つける。
そのトランプの周辺では、すでに政権移行の準備が本格化し、首席補佐官には「選挙のプロ」として選対本部長を務めた女性、スーザン・ワイルズ氏の起用が固まった。また、本稿執筆の段階ではあるが、貿易を統括する通商代表部代表に、対中強硬派で対日貿易にも厳しいロバート・ライトハイザー氏の就任が取り沙汰されている。
外交や安全保障を担う国務長官や国防長官ポストにも、以前、安全保障担当の補佐官を務めたロバート・オブライエン氏や駐日大使だったハガティ上院議員、それに、マルコ・ルビオ上院議員といった大物の名前が浮上している。
このほか、選挙戦で巨額の私財を投じトランプを支えたテスラ創業者のイーロン・マスク氏が政権入りし、経済や外交に色濃く関与する可能性が高い。
これらの顔触れを見ると、筆者らが予想している変化は、良い面悪い面含めて確実に起きると考え、備えておくべきだろう。