トランプ氏の米大統領選“圧勝”に、先物取引も、日米の金利差も、ドル円も敏感に反応している。東京株式市場では、トランプ氏が掲げる関税引き上げにより世界の貿易量が低下するとの懸念から、海運銘柄が下落した。米国の政策が今後どうなるかは非常に読みにくいが、共和党の政策綱領にヒントがある。主な6点から経済分野にフォーカスし、電気自動車や半導体、米中貿易摩擦などで起こり得るリスクを解説する。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
また4年間トランプ大統領に振り回される
11月5日の米大統領選挙は、大接戦で決着までに時間がかかるとの事前予想に反して、当日中に共和党候補のドナルド・トランプ前大統領の当選が確実になった。
6日のアジア時間、開票早々にトランプ氏の優勢が伝わると、米国の株式先物は大きく上昇した。米国の財政赤字の増大やインフレが再燃するのではといった懸念もあり、米金利は上昇し日米の金利差も拡大した。
これに伴い、外国為替市場ではドル高・円安が進行した。いわゆる「トランプ・トレード」である。日経平均株価は前日比1005円77銭(2.61%)上昇して引けた。
トランプ前大統領の再選で、今後の米国の政策は大きく変化することが予想される。「米国第一」をスローガンに掲げるトランプ氏は、関税の引き上げを世界各国に示し、自らに有利な条件の実現を狙っている。
取引条件に使えるものは、何でも利用するのがトランプ氏の政策とみられる。今のところ経済政策面で同氏は、減税の恒久化、化石燃料生産などの規制緩和なども重視しているようだ。先端分野を中心に、米国の対中強硬姿勢も鮮明になるだろう。
ただ、過去の政権運営を見ると、トランプ氏がどのような政策を発動するか事前に予想するのは難しい。大統領選挙でのトランプ氏勝利により、米国の政策運営の予見性は低下せざるを得ない。今後の4年間、世界の主要国はトランプ大統領に振り回される覚悟が必要だろう。