関税、米中貿易、半導体、EVやバッテリーはどうなる?
金融市場における重要な変化として、6日のアジア株式市場で中国本土と香港の株価下落が鮮明だった。主要投資家はトランプ政権が中国などに対する関税を引き上げる展開に警戒を強めた。
トランプ氏は、中国からの輸入品に60%、ケースによって100%の関税を適用すると主張している。米国に対し不公正な貿易取引を行う国に、関税引き上げで対価を負わせるというのが同氏の基本的な考えだ。ただ、実際に関税を引き上げると、その増加分の少なくとも一部を負担するのは米国の消費者(国民)だ。関税でモノやサービスの価格が上昇すれば、米国のインフレ率は再度上昇するだろう。
関税以外の分野でも、トランプ氏は中国に対して厳しい姿勢で臨むだろう。バイデン政権が実施して先端半導体の対中禁輸措置などは、想定通りの効果を果たしたとは言いづらい。ファーウェイが台湾積体電路製造(TSMC)製の先端チップを、規制をかいくぐって調達したことも明らかになった。
トランプ次期政権は、半導体、人工知能(AI)などの先端分野で対中禁輸、制裁措置をより厳格化するだろう。中国のチップ、関連部材や製造装置の調達は難しくなるかもしれない。半導体設計・開発・製造技術の向上の遅れは、中国の景気後退リスクにつながる。
中国内でEVや車載用バッテリー、鉄鋼、太陽光パネルなどが過剰生産であること、人民元の為替レートの管理、人権問題、南シナ海や台湾問題などでも、米国は対中強硬姿勢を徹底するだろう。米国と中国の通商摩擦リスクは上昇している。EVなどの分野で関税の報復合戦や、不買運動(非関税障壁)などが激化する“貿易戦争”の恐れもある。
そうした懸念から、6日、中国本土と香港の株式市場で上海総合指数は前営業日から0.10%下落。香港のハンセン指数は2.24%下落した。全人代常務委員会が追加の経済対策を発表するとの観測を、トランプ氏の対中政策リスクが打ち消したとの見方もあった。