トランプ大統領当選で予想される政策
トランプ氏の政策がどのようになるかを考えるヒントは、共和党の政策綱領にある。主な内容に、下記の6点が挙げられるだろう。
・国境封鎖を実施し、移民の阻止と強制送還を実行する
・米国をエネルギー生産国にする。米国を製造大国にする
・労働者に大幅な減税を実施する
・米軍を世界最強の軍隊にする
・米ドルを世界の基軸通貨として維持する
・電気自動車(EV)の推進を止め、規制を緩和する
第1期トランプ政権時の政策、発言と比較すると、脱炭素への反対姿勢はかなり強固になっているようだ。ただ、選挙戦の終盤、テスラ創業者のイーロン・マスク氏の支持を取り付けるなどEV反対姿勢はすでに変化しているように見える部分もある。
トランプ氏と共和党は、不公正な貿易慣行に対応して米国内での生産活動を増やす方針も共有した。トランプ氏は、全世界からの輸入に一律10%の関税を課す(ベースライン関税などと呼ぶ)ことを目指しているようだ。
トランプ氏は、自分は希代のディールメーカー(取引をうまく行える人物)と評している。わが国、EU・ユーロ圏加盟国、中国、メキシコやカナダなど貿易相手国に関税の引き上げを突き付け、譲歩、あるいはトランプ政権に有利な提案を引き出す。それがベースライン関税の狙いといえるだろう。
米国の経済政策面でトランプ氏は、1期目の政権時に実施した通称「トランプ減税」の恒久化を掲げた。法人税率を現行の21%から15%に引き下げる方針だ。減税によって、企業のフリーキャッシュフローは増加し、一時的に経済成長率は上向くだろう。近視眼的な成長期待の上昇を反映し、6日のアジア時間、わが国などの株価は上昇した。
ただ、税収減をカバーする財源は明確になっていない。超党派で構成する「責任ある連邦予算委員会」は、トランプ氏が公約に掲げた政策を実行すると、連邦財政赤字は2026~35年度の10年間に7.5兆ドル(約1115兆円)増加すると試算した。今すぐではないが、連邦財政が悪化する懸念は高まるといえる。