重大な意味を持つ
松本氏の「言葉の変化」

松本人志氏の弁論準備手続きが、決定的な敗北につながりかねない理由松本人志氏の弁論準備手続きにおける「言葉の変化」は、重大な意味を持ちそうだ Photo:JIJI

 6月5日、『週刊文春』の発行元の文藝春秋などに対する訴訟に関して、松本人志氏の弁論準備手続きがオンラインで行われました。スポーツ紙や夕刊紙が、相変わらず松本人志氏および吉本興業寄りの報道を続けていますが、私は記事の中にあった「ある部分」がとても気になりました。

「松本は、女性の同意を得ずに性的行為を強制したことは一度もないと主張。そのため、性的行為の強制を訴えるのであれば、まずは被害者とされる女性を特定しないと、その女性が実在するか否かが判断できないとしている」(日刊ゲンダイデジタル)。

 この主張は、松本氏が敗訴する「決定的」なものになるかもしれません。報道直後は、松本氏も吉本興業も格下の芸能人に女性たちを集めさせたこと自体を全面否定していましたが、すぐにそれを覆し、女性との性的トラブルだけはなかったと主張し始めました。しかし今回、とうとう「性交渉」はしたけれど「女性に強制したことは一度もない」と発言したことになります。

 この言葉の変化は重大な意味を持ちます。もし彼が性交渉を行い、同意を得たものだと法廷で主張したとしても、不同意性交等罪への法改正によって、法廷では彼の発言と被害者A子さんの発言が同等の重要さをもって受け取られなくなるからです。以前の記事でも、松本氏の行為が2023年に改正された「不同意性交等罪の要件」に完全に触れることを説明しました。

 以前の強制性交等罪、準強制性交等罪での要件は、以下の通りです。

(1)暴行若しくは脅迫を用いること。

(2)心身の障害を生じさせること。

(3)アルコール若しくは薬物を摂取させること。

(4)睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること。

 また、不同意性交等罪への改正では、さらに4つの要件が加えられています。

(5)同意しない意思を形成し、表明し又はそのいとまがないこと。

(6)予想と異なる事態に直面させて恐怖させ若しくは驚愕させること。

(7)虐待に起因する心理的反応を生じさせること。

(8)経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること。

(以上は、阿部尚平弁護士・弁護士法人デイライト法律事務所による解説)