そんな居心地のよさに惹かれ、やがてタツキの足は自然と歌舞伎町のホストクラブに向かうようになった。最大の魅力は、「男に褒められることの気持ちよさ」だという。

「男社会を知らない女性に仕事とか経歴のことを褒められてもまったく気持ちよくない。でも、競争社会を生きているホストに褒められると、ちゃんと俺を見てくれてるなって思えるんです。もちろん向こうは仕事でお世辞を言っているのはわかっているんですが、同じ男同士で色恋が通じないからこそ、本当の自分を評価してくれている気がする」(タツキ)

 仕事の合間を縫って、月2回ほどホストクラブに通っているタツキ。さまざまな店舗を巡り、「推し」ホストもできた。

「同じ野球経験者のホストさんなんです。カッコいいのに気取っていないところが好きですね。彼が『シャンパン入れてもらうのって本当にありがたい。本気で声出して恩返ししたい』と言っていたので、ボーナスが出たらシャンパンを入れてあげるつもりです」

 日々、仕事の良し悪しで社内評価を下されているタツキは、シャンパンを入れるとそのホストがどれだけ店で評価されるのかも知っている。「一緒に夢を追いかけよう」が、ホストが女性客に語る常套句だが、男だからこそ、女性とは違う視点で「ホス狂う」人間もいるのである。

女医やバリキャリ、エリートサラリーマンに漫画家まで……歌舞伎町でカネを使いまくる太客の正体同書より転載