度が過ぎた推し活は「ホスト沼」と一緒?精神科医が教える「取扱注意」なホルモンの名前写真はイメージです Photo:PIXTA

近年すっかりブームとなった「推し活」。生活に張りを与え、仕事や勉強のモチベーションにもなる“推し”への応援は、幸せホルモンのドーパミンを脳内に分泌してくれる。しかし、楽しい推し活もいきすぎれば、ギャンブルやアルコール、ホストクラブへの過剰な貢ぎなどと同様の依存状態に陥ることも。精神科医の伊藤拓氏が危険をはらんだ推し活のやり方に「待った!」をかける。※本稿は、伊藤拓氏『精神科医だけが知っているネガティブ感情の整理術』(ハーパーコリンズ・ジャパン)の一部を抜粋・編集したものです。

幸せホルモン「セロトニン」と
「ドーパミン」はどう違うのか

 睡眠は、体を休ませたり、脳内の情報を整理したりと、私たちが生きていく上でとても重要なものです。質の高い睡眠を得るために欠かせないのが、「メラトニン」というホルモンです。

 メラトニンは脳内の松果体という部位から分泌され、睡眠と覚醒のリズムを整え、自然な眠気をもたらすために働きます。そのため、「睡眠ホルモン」とも呼ばれています。そのほかにも抗酸化作用があることから、老化を緩やかにし、免疫力を高める働きも期待できます。

 実は、このメラトニンの原料となっているのが、セロトニンなのです。

 セロトニンは、朝方から体内で作られ始め、陽が沈む頃からメラトニンに変化していきます。つまり、体内で作られるセロトニンが多いほど、夜に分泌されるメラトニンの量も増えるわけです。

 睡眠不足になると、人はネガティブな感情を抱きやすくなります。セロトニンは寝ている間にも、メラトニンとなって貢献してくれているわけです。セロトニンがいかに大事か、おわかりいただけたかと思います。

 セロトニン、ノルアドレナリンと並んで、感情にかかわりが深い神経伝達物質に「ドーパミン」があります。セロトニンは、ノルアドレナリンとドーパミンの分泌を制御し、脳内物質のバランスを保つ役割を担っていますが、ドーパミンを分けてご紹介しているのは、この脳内物質の特徴をきちんとお伝えしたかったからです。

 ドーパミンは分泌されると幸福感が得られることから、セロトニンと同様に「幸せホルモン」として紹介されることがあるのですが、セロトニンが「穏やかな幸福感」であることに比べ、ドーパミンで得られるのは高揚感のある幸せ、より興奮度の高い幸せ――いわば「快楽」です。たとえば、大好きなアーティストのコンサートで感激する、スポーツの試合で盛り上がる、そんな時に脳内ではドーパミンが分泌されています。