昔の音楽+ビジュアルを組み合わせた
「ヴェイパーウェイヴ」ブーム

鈴木:もう1つの軸は、ヴェイパーウェイヴのブームです。Reddit(英語圏でメジャーな掲示板サイト)などで、80~90年代のムード音楽と、当時をイメージさせるサイバーパンクっぽいビジュアルをミックスしたものが人気を博したことが土台になっています。中身は異なりますが、ニコニコ動画におけるボカロ楽曲とMVともよく似たムーブメントですね。

竹内まりや、松原みき…昭和の「シティポップ」がなぜ今、海外でブームなのかヴェイパーウェイヴのイメージ(Wikipediaより)
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――当時を懐かしむ、だけでなく、新たな要素が加わることによって、いまの海外の若者にも受け入れられている、ということですね。確かに、YouTubeで人気のシティポップ動画は、ちょっと昔のアニメの映像と組み合わせられているものが多い印象です。80年代のアニメ、例えば「シティハンター」とか。

鈴木:ええ、わたせせいぞうさんのイラストとか、ああいうイメージですよね。シティポップ自体が、70~80年代のアメリカの音楽を下敷きにしているので、共通点が多かったという事でもあります。当時はまだ実際に、例えばアメリカ西海岸を訪れた日本人は少なかったはずですが、テレビなどを通じて得た「かっこいいアメリカ」のイメージを元に音楽やジャケットを作ったりしていた。日本人のアメリカに対する憧れが生み出した、ある意味、現実離れしたビジュアルや音楽に、こんどは当時を彷彿とさせるアニメ風イラストなどの日本「的」イメージを加えて、海外のネット世代が新たなジャンルを生み出していたというのは興味深いですね。そしてそれが、原点とも言えるシティポップのリバイバルにつながっているわけです。

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