人事パーソンたちが、“孤独”にならないために
白熱したグループトークと質疑応答を経て、イベントはクロージングに向かった。
改めて、書籍『シン・人事の大研究 人事パーソンの学びとキャリアを科学する』の著者3人が参加者に向けて、メッセージを送る。
「『人事』をあまり主語にせず、うちの会社、うちの経営という視点で捉え直すと、“違う気づき”が生まれるかもしれません」(田中先生)。「人事の分野は、経営学問的にも最も遅れている領域と言われていますが、遅れているからこそチャンス。これからは人事の時代、皆さんの時代です」(中原先生)。「課題はたくさんあると思いますが、みんなで議論を重ねていけるといいですね」(長谷波さん)。
参加者たちは、3人の言葉に深く頷き、読書会が終了した後も、周囲の人と会話を交わすなどして、イベントを名残惜しむ様子だった。
今回の読書会で私が最も印象に残ったのは、会場でもオンラインでも、具体的な課題についての質問が続出したことだ。書籍にも書かれていた、「人事の仕事が『新規課題型』にシフトし、仕事の終わりが見えない『エンドレスワーク』や『社内ぼっち』に陥っている」という、人事仕事の状況をリアルに感じた。そして、リアリティのある質問に対して、著者の3人が、事例を交えながら、わかりやすい言葉でアドバイスし、進行役の広瀬さんがポイントとなるワードを拾っていくことで、課題にかかる霧が晴れていくようだった。
今回の読書会を終えての感想を、広瀬さんに尋ねた。
「参加した皆さんが、同じ人事の仕事に携わる“仲間”との交流や対話を通して、悩みやモヤモヤ感が解消したり、実践のヒントが得られたりする光景がありました。さらに、本書をきっかけにして、人事パーソンの対話や学び合いが広がっていくことを願っています」
終了後に参加者が回答したアンケートには、読書会参加者の熱意の素晴らしさや人事領域で同じようなモチベーションで働く人たちがいることへの安心感が書かれていた。読書会で学びになったこと、印象に残ったこととしては、「風土を変えていくのは明日からの行動のみ」「経営に紐づくかをフィルタリングしたうえで、やらないことを決める」といった前向きな回答が目立った。
今回の読書会のタイトルは、「語り合わNight!」――まさに、「語り合わないと」生まれない気づきがたくさんあった一夜だった。このような語り合いの場が人事パーソンの思いをポジティブなものへと昇華させていくに違いない……そう実感して、私は帰途についた。