公費によるHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンのキャッチアップ接種期間は、来年3月末までだ。
キャッチアップ接種は、2013年6月から21年11月まで続いた「積極的勧奨の差し控え」で接種機会を逃した女性――現年齢が16~27歳、生年月日でいえば1997年4月2日~08年4月1日生まれの女性が対象だ。
HPVワクチンは3回接種が基本で、通常は1回目から3回目までを6ヵ月以上空けて接種する。標準的な間隔で打ち終えるには、遅くとも9月末までに初回の接種を受ける必要があった。
しかし、10月16日に厚生労働省が各自治体へ出した事務連絡によると、11月末日までに4価、もしくは9価ワクチンで初回接種を行えば、最短4ヵ月の公費負担期間内に接種を終えることができる。
HPVワクチンは、HPV感染で発症する子宮頸がんを予防する目的で開発されたワクチンだ。400種類を超えるHPVのうち、特にがんリスクが高いウイルスの感染予防に働く。
超ハイリスクウイルス2種類が対象の2価、4価(2価+2種類)、そして9価(4価+他の高リスクウイルス5種類)のワクチンがあり、2価と4価の予防効果は50~70%、9価は80~90%だ。
英国からの報告では12~13歳でワクチンを接種した場合、非接種世代と比較し、子宮頸がん発症率が87%減少。同じく、スコットランドの報告では発症数「ゼロ」という驚きの結果が示されている。両者ともに別名「マザーキラー」と呼ばれる子宮頸がんの撲滅が視野に入ってきた。
翻って日本では、9年続いた積極的勧奨差し控えと偏った報道の影響で、今も毎年1万人以上が新たに子宮頸がんと診断され、死亡率も横ばい~微増のままだ。「接種の空白期間」に当たってしまった世代の今後が気にかかる。
未接種のキャッチアップ対象者は、病院に予約を入れ11月末までに初回接種を済ませよう。また、自治体が独自に助成を続ける動きもある。予約が間に合わなかったときはぜひ、近隣の保健所や自治体の窓口で相談をしてほしい。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)