メディアには「女のカラダ」に関する都市伝説があふれています。「あたためは生理痛にも妊活にも効く」「仕事をしすぎるとオス化する」「恋愛やセックスをしていないと女性ホルモンが枯渇する」……。これらはどれも、医学的には根拠のない情報。でも、それに振り回されて、不調のスパイラルに陥ったり、落ち込んだりする女性は少なくありません。
「女体」についての第一人者、産婦人科医の宋美玄先生が、いまの医学でわかっている「ほんとうのこと」だけをベースに20代~40代女性の、身体や性の悩みに答えた新刊『医者が教える女体大全』の中から、一部を抜粋して紹介いたします。

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子宮頸がんワクチンは若い子のためだけのものではない

 子宮のがんには、子宮の本体ががん化する「子宮体がん」と、子宮の入口にあたる子宮頸部にがんが発生する「子宮頸がん」があります。

 子宮頸がんは、20~40代の若い女性に多い病気です。ウイルス性のがんで、原因はヒトパピローマウイルス(HPV)。主に性交渉で感染します。一度のセックスでも感染の可能性はあるので、経験人数は関係ありません。コンドームを着ければある程度は感染を減らせますが、予防とはいえません。性経験がある女性の50~80%は、生涯で一度はHPVに感染するともいわれています。

 感染すると必ずがんになるわけではなく、100種以上あるHPVのうち、がん化するのは15種類ほどといわれています。感染してもウイルスの90%は自然と体外に排除されますが、運悪く何年も子宮にとどまることがあります。すると、最初は細胞の遺伝子を変化させます。これを「異形成(いけいせい)」といい、そのまま放っておけばがん化するリスクがあります。

子宮頸がんは予防できる「がん」である

 子宮頸がんは、がんのなかではめずらしく、予防できる病気です。ワクチンがあるからです。

 できれば初めての性交渉をする前にHPVワクチンを接種しておくのが望ましく、日本では平成25年に定期接種化されました。しかしほどなくして積極的勧奨が中断され、現在に至っています。今、30代以上だと接種していない方が多いでしょう。日本では年間1万人以上が新たに発症し、約2800人が死亡しています。予防できるがんなのに、こんなにたくさんの人が亡くなっている現実を、医師としてとても悔しく思っています。

 あまり知られていませんが、ワクチンは20~30代で接種しても効果が期待できます。よく「性交経験がないうちに打つ」といわれるので、10代が対象というイメージが強いですが、経験があっても、先述したとおりウイルスのほとんどは自然と体外に排除されるので、現時点で感染していない可能性のほうが高いのです。検診で感染していないことを確認したうえで接種すれば、その後の感染を防げます。

 国内で接種できるワクチンは、2価の「サーバリックス」と4価の「ガーダシル」でしたが、9価の「シルガード9」も20年7月に製造販売が承認されました。先ほどお話したとおり、15種類のHPVにがん化の可能性がありますが、そのうち2種類に対して予防できるのが2価で、4種類なら4価という意味です。15種類のうちの2種や4種だと少ないと思われるかもしれませんが、それでも、子宮頸がんの原因の7割を占める種類をカバーしているので、十分予防になりえます。

 2価は初回から1ヵ月後と6ヵ月後の、計3回。4価と9価は、初回から2ヵ月後と6ヵ月後の計3回接種します。その間にセックスはしてもいいですが、妊娠すると一度中断することになります。出産後に、また最初から打ち直してください。自費診療になるので、費用は3回分の合計で5~6万円ぐらいになると思います。

 早くからワクチンを公費で積極的に打ってきた国では、ワクチン接種世代の感染率が劇的に減少しているという報告もあります。けれど日本では、ワクチンの安全性を不安に思う人が少なくありません。副反応についてのニュースを見聞きしたことがあるでしょう。ゆえに、ほかの先進国と比べ接種率がずば抜けて低いです。

気になる副反応については……?

 気になる副反応については、2015年に「名古屋スタディ」と呼ばれる大規模調査の結果が発表され、ワクチンを接種した人としていない人とを比べたところ、訴えられている症状の出方に差がないとわかりました。ほか国内外のさまざまな検証を経て、大きく報道された副反応については科学的にみて心配ないと決着がついています。

 とはいえ誰もがワクチンを打つべきかというと、そうともいえません。パートナーが決まっていて、ふたりのあいだにHPVが持ち込まれないだろうと思われる人や、セックスに消極的な人は、接種せず検診だけという考えでもいいと思います。

 子宮頸がん検診の目的は、早期発見、早期治療です。ワクチンを打っても、検診は欠かさないでくださいね。子宮頸がんは自覚症状がないので、気づかないうちに進行します。異形成や初期の段階のがんであれば、手術で子宮頸部を少しだけ切り取ることで完治する可能性があります。ただし子宮頸部が短くなると、妊娠したときに早産しやすくなるなどのリスクがあります。がんが深く進行すると、子宮の全摘出が必要になり、出産という選択肢がなくなります。さらにほかの臓器に浸潤や転移していれば、命にも関わります。

 子宮頸がんの検診を、2年に一度は受けましょう。腟から器具を入れ、子宮頸部の細胞をこすり取ります。積極的に受けたい検査ではないと思いますが、それによってたくさんのものが守られるのです。

『医者が教える女体大全』には、上記のような、女性ならではの病気や心配事について、どうすればよいのかが医学的に書かれています。ぜひ、参考にしてみてください。