『腸よさらば 潰瘍性大腸炎の発症から10年、大腸摘出して人工肛門になったけど閉鎖手術を経て自分の肛門に戻った話』(2023年7月 著:大井ヨシカズ)は、故安倍元首相が患っていたことで知られている難病の潰瘍性大腸炎になった大井さんが、大腸を全摘出して、その後ストーマ(人工肛門)になった闘病記です。価格は1980円と高単価で、少部数。当事者や身近に同じ病気の人がいて、知識や経験談が必要な人だけ読めばいいという本なんですが、大井さんは結婚していて、お子さんもふたりいるんです。

 最初は、著者だけの原稿で構成していたのですが、作り上げていく過程で、奥さん側の目線も入ったほうが面白いのではないかと著者から提案がありました。

 闘病ってその家の問題なので、潰瘍性大腸炎患者の当人だけではなく、家族も読む本だって考えた場合に、補足するものとして「この時に奥さんはどう思ってたのか」といった家族側の視点を入れたほうが立体的になる。合間に奥さんのコラムを入れる構成にしたら、ぐっといい本になったんです。

 本がどうやったら面白くなるかって考えた時に、重層的というか多面的というか、もうひとつの観点が入るとより厚みが出て面白くなります。大井さんの本の中で、奥さんのコラムの割合は、分量にしたらほんの3パーセントくらい。けれど、それが間に入ることで、すごくいい本になった。だから、本全体の構成や章の中の構成は常に考え続けて、もっと面白くなる方法を模索し続けたほうがいいです。