少子化にもかかわらず、中学受験ブームに沸く関西。受験層の広がりが指摘される中、2025年入試も引き続き激戦が予想される。特集『わが子が伸びる中高一貫校&塾』の#19では、台風の目となる注目校を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 宮原啓彰)
大阪府の私立高校の授業料無償化で
中学受験への新規参入が増加中
前回2024年入試で受験率が10.17%と、2年連続で10%の大台に乗せた関西(2府4県)の中学受験。来る25年入試も、関西の中学受験塾関係者が「第3次中受ブーム」と呼ぶ目下の盛り上がりは冷めそうにない。
「25年入試は受験者数こそ少子化によって横ばいか微増とみているが、受験率の方は大阪がけん引役となり前回24年入試はおろか、過去最高だった07年入試(10.4%)を更新することもあり得る」と言うのは、日能研関西の森永直樹取締役だ。
その背景の一つが24年度から大阪府で段階的に始まった高校授業料の「完全」無償化だ。大阪府の私立中高一貫校の後半3年間の授業料が“タダ”となることで、中学受験もより過熱するとみられているのだ。
「高校無償化の中学受験への本格的な影響は26~27年入試以降とみているが、すでに25年入試でも表れている。高校無償化の発表をきっかけに、これまで中学受験を考えていなかった層が私立校の充実した設備や面倒見の良い教育に気付いたことで、大手塾に入らないまでも英語入試や自己推薦入試などを利用したライトな中学受験にかじを切っている」(森永氏)
アップの井上隆弘執行役員も同じ見解だ。「大阪府に加え、奈良県でも24年度から所得制限付きの高校授業料の実質無償化が始まったが、中学受験の追い風になることは間違いない」(井上氏)。
また、25年入試では学校選びにも「変化が起きている」と、浜学園の松本茂学園長は言う。
「関西では前回24年入試まで強気な出願が見られた。だが、25年入試はコロナ禍が収束して学校選びの準備をする時間が十分にあったことで、大学合格実績だけにとどまらない、各校の教育方針や取り組みなどを研究した上での堅実な学校選びが増えている」(松本氏)
希学園の黒田耕平理事長兼学園長も「特に志望動向に動きが見られるのは中堅校で、総じて志願者数を増やしている。公教育への不安感から、受験勉強をそこまで本気にやらずとも手軽に受けられるような私立中学を選ぶ家庭が増加している」と指摘する。
中学受験の裾野が広がっている関西の25年入試だが、その台風の目となりそうな注目校はどこなのか。次ページでは、灘を始めとする最難関校や高槻などの人気校に加え、にわかに注目を集める中堅校を一挙紹介する。