「上司も部下も、社会人全員が一度は読むべき本」「被害者や加害者にはならないためにもできるだけ多くの人に読んでほしい」と話題沸騰中の本がある。『それ、パワハラですよ?』(著者・梅澤康二/マンガ・若林杏樹)だ。自分はパワハラしない、されないから関係ない、と思っていても、不意打ち的にパワハラに巻き込まれることがある。自分の身を守るためにもぜひ読んでおきたい1冊。今回は特別に本書より一部抜粋・再編集して内容を紹介する。
「手を握る」「太ももを触る」は1回でもセクハラになりえる
マスコミに勤務する20代男性。職場の40代の女性上司がすれちがうたびに肩や背中を触ったりする。飲み会の帰りにタクシーに二人で同乗したときに、手を握ったり、太ももを触られたりしたので、セクハラではないかと感じている。
相手の体に触れる行為については、その部位が「性的な部位(唇や胸や尻など)」であればそれ自体が性的な行為と評価されます。
性的な部位への接触という点で、その程度も非常に重いと評価されます。
そのため、このような行為はただちにセクハラと評価されることになります。
では、性的な部位でなければよいのかというと、もちろんそんなことはありません。
とくに異性間で相手に触れる行為は、それがどのような部位であっても、相手や周囲からすれば性的な接触のように感じられる傾向にあります。
そのため、髪や肩、背中など同性間ではただちに問題となりにくい部位に触れた場合でも、これが性的な言動と評価される可能性を完全には否定できません。
そして、このような接触行為が繰り返されれば、これを不快に思う相手・周囲の職場環境が害されることも一般的にありえます。
したがって、今回のケースのように、相手の体に直接触れる行為は、直接的な性的言動としてセクハラに該当する可能性が高く、これは行為者が男性であっても女性であっても同じです。
とくに、本件のように手を握る・太ももを触るなどは相手への強い性的関心を直接示す行為といえるため、たとえ1回でもセクハラに該当しうると考えます。
冗談で軽く肩を叩くぐらいではセクハラにはならない。しかし、しつこく繰り返された場合は…
それなりの信頼関係がある中で、会話の弾みや冗談で肩などを1回叩いた程度ではセクハラになるとは思われません。
しかし、そのような行為が執拗に繰り返されれば、相手も嫌気がさして結局セクハラとしてトラブルになる可能性がある、と留意しておきましょう。
※『それ、パワハラですよ?』では、ハラスメントかどうかがわかりにくい「グレーゾーン事例」を多数紹介。部下も管理職も「ハラスメント問題」から身を守るために読んでおきたい1冊。
弁護士法人プラム綜合法律事務所代表、弁護士(第二東京弁護士会 会員)
2006年司法試験(旧試験)合格、2007年東京大学法学部卒業、2008年最高裁判所司法研修所修了、2008年アンダーソン・毛利・友常法律事務所入所、2014年同事務所退所、同年プラム綜合法律事務所設立。主な業務分野は、労務全般の対応(労働事件、労使トラブル、組合対応、規程の作成・整備、各種セミナーの実施、その他企業内の労務リスクの分析と検討)、紛争等の対応(訴訟・労働審判・民事調停等の法的手続及びクレーム・協議、交渉等の非法的手続)、その他企業法務全般の相談など。著書に『それ、パワハラですよ?』(ダイヤモンド社)、『ハラスメントの正しい知識と対応』(ビジネス教育出版社)がある。