“社外に丸投げ”だと失敗する。“内製化”を目指そう
――とはいえ、現実的には、「社外のプロ」に頼るほかないという企業も多そうです。
たしかに、「全部を社内だけでなんとかしよう」とする必要はないと思います。
ただし、外部の力を借りるときには、注意すべき「落とし穴」が2つあります。
1つめは、「業者にデータを分析してもらって終わり」になるパターンです。
近年だと、人や組織の現状をスコア化するツールや、アンケートに基づいたサーベイを提供するベンダーも増えています。こうしたサービスにまったく価値がないというわけではないにせよ、これらを導入しただけでデータドリブン人事をやった気分になるのは、あまりにもったいないですね。
「このチームのパフォーマンスは90点です」とか「この人のエンゲージメントスコアは65点です」といった分析結果をひととおり眺めて、「へぇ、いいね!」「あ〜、ダメだね……」で終わってしまうケースが多い。
本当はそれらの数字をもとにして、さらなる分析を重ね、みんなで議論を重ねていくことのほうが大切なのに、その手前で止まってしまっている――これが避けるべき「第一の失敗パターン」です。
――たしかにありそうなお話です。もう1つの落とし穴はなんでしょう?
「第二の失敗パターン」は、「プロジェクトそのものを外注してしまうこと」です。要するに「外部コンサルへの丸投げ」ですね。
ウェブページを制作したいのであれば、しっかりと仕様書をまとめたうえで、業者に「このとおりにつくってください」と発注すれば、それで事足ります。
しかし、人事関連のデータ分析の場合には、そのような“丸投げ”は、まずうまくいきません。たとえば、外部のコンサルに「うちの会社で優秀なリーダーになりそうな人材を、データ分析によって調べてください」とお願いしても、まずうまくいくことはないでしょう。
――それはなぜでしょう?
「優秀さとは?」「優秀なリーダーとは?」といった定義は会社によって違いますし、さらには「それを測定するためにどんなデータを取るべきか?」「それをどう分析するべきか?」などの条件も、最終的には企業側で見定めていく必要があるからです。
どんなにすごいコンサルタントであっても、こうしたことは外側からはわからない。本当に意味のある人事データ分析をやろうと思うなら、企業内の当事者たちが「自分で考えるプロセス」を避けて通るわけにはいかないんです。
しかも、その精度を高めるためには、仮説を立てたうえでデータを分析し、その結果に基づいて仮説を修正するというサイクルをぐるぐる回すしかない。コンサルなどに外注してしまうと、このサイクルの回転数が極端に落ち込んでしまうんです。