自らが主導権を持って経営をする位置づけではないので、出資して何らかの協業で成果が出ればいいという考え方です。その中でフロム・ソフトウェアの主力ゲームであるアクションRPGゲームの「エルデンリング」が世界的なヒット作品になったので、場合によってはフロムの株式は売却してキャピタルゲインを稼いでもいいというのがこれまでの考え方だったわけです。
ところがKADOKAWAを買収して子会社化するとなると、事業の位置づけはソニーグループの本業に定義が変わります。ではその本業とは何なのか?2つ目の視点でさらに説明させていただきます。
視点2
出版とIP創出
KADOKAWAという会社は歴史的に見れば出版大手の角川書店が源流で、80年代には角川映画に進出して大いに業界を沸かせたことで大衆の記憶に残っています。
それがインターネットの時代に入ってニコニコ動画で知られるドワンゴと合併しました。その後、新規事業であるN高等学校(N高)などの教育事業を育て現在に至ると一面的には捉えることができます。
ところがそのKADOKAWAの事業構成を見ると、もうひとつ別の一面が見えてきます。
決算発表ではKADOKAWAの事業セグメントは大きく5つに分類されているのですが、その筆頭でかつ最大の稼ぎ頭が「出版・IP創出」セグメントです。2番目の稼ぎ頭が「ゲーム」、3番目がやや利益額が落ちて「アニメ」と続き、4番目の「WEBサービス」と5番目の「教育・EdTech」という順序です。
ここで重要なキーワードがIP創出です。KADOKAWAの複雑なビジネスモデルをものすごく単純に記述すれば、ライトノベルの出版で生まれたIP(キャラクターや作品の権利)を、アニメやゲーム、放送に展開して儲けているという説明ができます。
ちなみに、もう少し複雑に記述するとこの構造は逆にも読めます。ラノベ読者の中でももっともコアなファン層がN高の高校生としてKADOKAWAグループに集まり、その人財群がやがて人的資本として成長してKADOKAWAを支える人材の創出源になっていくという逆三角形の説明が成り立つのですが、その話は今回は脇筋にいったんおかせていただきます。