ひとことで言えば、ソニーの視点で本業だと考える出資はできれば100%出資して、その株はずっと保有していきたい。一方で副業としての出資の場合は業績がよくなり株価が上がれば売ってしまってキャピタルゲインを得ればいいというのです。

 その当時、ソニーが資本政策としてかかえる大きな経営課題がありました。それが上場子会社のソニーミュージックでした。

 それよりもさらに昔の盛田昭夫さんが会長だった時代に、ソニーは子会社のソニーミュージックを上場させました。上場するということは外部の株主に向けて株を売ることです。

 当時の考えではソニーは家電が本業の会社であり、ソニーミュージックは副業という位置づけでした。ですから会社が大きくなったら、株を売ってキャピタルゲインを得ればいいと考えたのです。

 ところが出井さんの時代になって、この過去の経営判断について転換する必要が生じました。デジタルの時代に入り、コンテンツがソニーの本業になる時代が見えてきていたのです。さらに問題だったのはプレイステーションのソニーコンピュータエンタテインメント(当時)がソニーミュージック主導で設立されていたことでした。

 そこでソニーが行ったウルトラCが、ソニーとソニーミュージックの合併です。そしてそれ以降、ソニーグループにとっての本業は家電という定義ではなくなります。

ソニーはKADOKAWAを
「本業」と位置付けて出資を検討している

 さて、仮にKADOKAWAとの買収交渉がうまくまとまってKADOKAWAがソニーグループ入りすることになると仮定してみます。

 今回の報道の重要な点は、その場合、ソニーはKADOKAWAを本業と位置付けて出資を検討していることになるという点です。

 これまでもソニーグループはKADOKAWAの株式を約2%保有しているほか、KADOKAWAのゲーム子会社であるフロム・ソフトウェアにも子会社を通じて約14%出資していました。これはソニーにとっての本業であるゲーム&ネットワーク事業に関して、サイドビジネス的な位置づけでKADOKAWAに投資をしていたのです。