ソニーはIP創出を本業に加える
必要性を感じたのではないか

 話をKADOKAWAのコア事業である「IP創出」に戻します。実はこのKADOKAWA最大の強みであるIP創出は、ソニーグループの本業リストの中に意識的には存在していないのです。

 これは考えてみれば不思議な話です。ソニーグループといえば今ではエンターテインメントの世界的なリーディングカンパニーに位置付けられます。GAFAMがいかに強大になろうと、ことエンターテインメントの領域に限ればソニーは任天堂、ネットフリックスと並ぶ世界3強の一角です。

 そしてクールジャパンという言葉があるように、エンタメの世界での日本企業の強みはIPにあります。

 世界のIPランキングが発表されると、ベスト10に日本のIPが5つランクインすると言われています。それがポケモン、ハローキティ、アンパンマン、マリオ、少年ジャンプという顔ぶれです。

 ワンピースや遊戯王、世界的にはタカラトミーのトランスフォーマーも20位前後でたくさんのお金を稼いでいます。そしてこのリストの面白いところは、ソニーグループのIPが出現しないことです。

 頭の中で想像してみてください。もしソニーグループがテーマパークを建設したらどうなるでしょうか?コンピューターグラフィックスやイマーシブ技術で世界の最先端を行くソニーグループであるにもかかわらず、驚くべきことに目玉になるIPが存在しないのです。感動を生み出すことをグループの根幹に据えている企業として、これは盲点ではないのでしょうか。

 ここで短絡的に「だからソニーはKADOKAWAのIPを狙いにいったのか?」と考えるのには賛成しません。というのもKADOKAWAにも世界のトップ30に入るような巨大なIP資産はないのです。

 そうではなく、ソニーはIP創出を本業に加える戦略的な必要性を感じたのではないかというのが今回の一件についての考察です。