コンセプトは、「9人の画家の作品を展示し、画家本人を交えて未来について語り合いながら、お酒や食事を楽しめる店」。9人の画家を選定する中で、最後の1人として紹介されたのが加納さんでした。当時、青山にあった加納さんのギャラリーを訪ねて、加納さんの作品を時間をかけて観ていくうちに、僕には何が描かれているかが鮮明に分かったんですよ。
そのことを話したら加納さんが、「なんでそこまでわかるんだ?」と驚いていました。実は当時、「自分とは何なのか?」という大きな問いを抱えていて、インド哲学に傾倒していたのですが、加納さんと対話する中で、精神性や美学という点で互いに深く共鳴しました。
そのとき加納さんから「ぜひ私のプロデューサーをやってくれないか」と頼まれたんです。
僕は、美術作品のプロデュースは未経験でしたから一瞬、躊躇しましたが、加納さんの作品に深く共感し、彼の絵が広まったときに、世の中に大きなインパクトを与えるということだけは確信できました。そこで、「今は何ができるかわかりませんが、ぜひご一緒させてください」ということで、その場でお引き受けしたんです。
「これ一つで世界を魅了できる」
マジックインキで描く創造的思考
――横澤さんが感じる、加納作品の魅力とは何でしょうか?
横澤 1つは、「水性のマジックインキを使って描く」という手法です。水性マジックインキの芯をゴボッと抜いてインクを絞り出す。黒、白、赤、青、黄の 5色のインクを水で溶いて、筆で濃淡をつけながら描いていくというスタイルです。
加納さんは「紙とマジックインキさえあれば世界を魅了できるということを子どもたちに示して、夢を見せたいと」いう信念を持っているんです。岩絵の具などの高価な画材を使って絵を描くことは、限られた人にしかできないけれど、この手法ならば、センスと努力で世界の人々を唸らせることができる……それを子どもたちに示したいというんです。その信念に共感しました。