挫折を経て今年活動を再開した伊勢谷友介さん。20代まで走りながら生きてきた彼が見つめ直した「幸せな社会」とは何か。デザイン思考を用いて再び人生を再構築しようとする新たな挑戦が始まる。これまでの経験と未来への展望を語る想いに迫る。(構成/梅澤 聡、編集/三島雅司)
20代までは、走りながら
人生をデザインしてきた
――伊勢谷さんが「デザイン思考を使って人生設計」という演題で講演されているのをインスタグラムで拝見しました。この講演会はどんな経緯で開催されたのですか。
伊勢谷 僕がリバースプロジェクトという会社の代表を務めていた頃、かつて愛媛県西予市周辺でさかんに生産されていた高級生糸「伊予生糸(いよいと)」の復活に向けた取り組みをお手伝いしていたんです。愛媛県や地元の大学などが参加する協議会が設置され、生糸を作る過程で生じる副産物を有効利用するアイデアづくりなどを行ってきました。
そのときのご縁で、今も定期的に、地元の実業家、ビジネスマン、学生などを対象とした講演会を開催してくれているんです。これまで「デザイン思考」や「幸せ」をテーマに話をしています。
――一般的に「デザイン思考」とは、「真の課題を発見し、人間中心に考えて解決策を見出す思考法」を指すようです。伊勢谷さんも同じ解釈ですか。
伊勢谷 はい。そう考えています。僕がリバースプロジェクトを設立したのは33歳のとき。この会社は、「人類が地球に生き残るために」をコンセプトに、NPOでもNGOでもなくビジネスとして、社会課題をクリエイティブに解決することを目指していたんですが、「デザイン思考」という言葉を明確に意識したのはこの頃です。
ただ、それ以前から同じような思考法を実践していたと思います。「課題を発見し、ある目的を達成するために、そこに至るプロセスから考えていく」っていうのは、ビジネスの場面だけでなく、人生を考えるうえでも必然的な思考法ですよね。