Hさんのご家庭の教育費は、月に約16万円。増減することもありますが、季節の講習が入ったり、学校で必要な教材があったなどと聞いています。少し見直せる部分はあるのではないかとお声がけはしているのですが、ここには減らせるものはないと言い、支出の詳細な内訳までは聞かせてもらえないでいました。

家計の危機をもたらしたのは、娘の「推し活」だった

 ご主人の収入が予定通りに下がって3カ月ほどしたころ、Hさんが言いにくそうに、「実は貯金はほぼ使ってしまい、クレジットカードを70万円ほど利用している」と教えてくれました。さらに聞くと、夫の収入が減ることを子どもたちに伝え、協力をお願いしたけれど、娘からの「推し活」の費用を断ることができず、支出が膨らんでしまったと話します。

 娘さんは小学5~6年生に不登校となったことがあり、再び学校に行けるきっかけづくりや気持ちが晴れることになればいいと考え、推し活を一緒にやり、家の外に連れ出していたそう。それが習慣となり、元気に毎日学校に通うようになった今も、その費用を家計から出しているのだそうです。その金額は毎月8万円前後。さらに娘さんは高校で禁止されているバイトまでして、毎月10万円以上を推し活に注ぎ込んでいるというのです。

「それが原因です、すみません」とHさんは申し訳なさそうにしていますが、これは正直、「すみません」どころではありません。高校生が毎月10万円以上もの大金を使っていること、それを親が仕方がないと出してしまっていること。それで家計が回らない、貯蓄ができないと言っているのですからおかしい話です。子どもの金銭教育的にも、人の成長過程においても、いいことは一つもありません。完全な「良くない支出」です。

支出の改善ポイントと優先順位は?

 Hさんのご家庭の場合、まずはこの娘さんにかかる支出の見直しが先決です。良く話し合いをしなくてはいけないでしょうし、向き合うのが大変だとか、つらいということもあるかもしれません。

 しかし、ここで親がしっかり伝えて改善しないと、子どもが巣立った後、借金をしてまで推し活をするようでは困ります。またHさんの家計としても、ここを改善しないと息子さんの教育費もつぶされてしまうでしょうし、ご夫婦の老後資金なんてできるはずもありません。

 夫の収入減をきっかけに、時間はかかりましたが、家計の一番悪いところが浮き彫りになったこのケース。習慣化したものを断つということは大変なことかもしれませんが、良い方向に変えるためにも必要なことです。しっかり向き合って改善し、みんなで明るい将来に備えられるように、ぜひとも頑張ってほしいと願っています。