この潜在的市場への参入を、カスタマージャーニーを使って考えてみよう。

 まず中小企業のセキュリティ担当者が、セキュリティについて一体どのような動線をたどり検討するかを考える。セキュリティという言葉から、おそらく担当者はいろいろなことを想起するだろう。

 入館ゲート、ハッキング、従業員による情報漏洩、メール誤発信、ウィルス、災害などに対する保険など。様々なことを担当者の目線で考えなければならない。ただでさえ人手不足でリソースが少ないにもかかわらず、セキュリティに関連する領域は広いのだ。

 こうして想定される顧客像と関心事をもとに、「興味関心、情報収集、調査、比較検討、購買、使用、共有」という、顧客の辿るプロセスについて、企業内で部門を横断して議論をする(図表8)。

 想定した顧客である中小企業の総務担当者が、一体どのような情報を探索するのか、どのような言葉で検索するのか、どのようなメディアを使って調べるのか、何を重要な基準として、情報を精査していくのか、どのような情報があると嬉しいのか……、と検討を重ねる。

図表8:中小企業の情報セキュリティ対策市場におけるカスタマージャーニー例本書より 拡大画像表示

カスタマージャーニーは「仮説」
見直しが必要で完成はない

 顧客の立場で検討をしていくと、様々なことが見えてくるだろう。

 例えば、顧客の悩みを解決するために必要なのは個別のサービスではなく、セキュリティに対するワンストップソリューション(一つですべての問題解決ができる総合的な仕組み)かもしれない。ただでさえリソース不足の中小企業において、少ない人数ですべてを検討しなければならないのだ。

 結果的に手が回らず、セキュリティに関連する様々なことに統合的に相談に乗ってくれる存在が必要になっているのかもしれない。