全社的な会議の場でも、各部門から出てきている人々は部門の利益代表のようにふるまってしまう。
カスタマージャーニー策定に当たっては、どの部門も顧客の一部しか見えていないことを認識し、互いに知見を共有していく姿勢が必要となる。
各所の知見を持ち寄り、顧客の課題に対する仮説を立て、マーケティング部門、営業部門、コールセンター、ウェブサイト構築部門などが横断で議論する。そして、どのような顧客の体験を実現したいのかを策定することで、社として目指すべき姿を明確にしていく。
議論の過程で、顧客に対するタッチポイントを全社的にどのように持つべきかという問題も生じるだろう。
特に情報収集の段階では、オウンドメディアといわれる自社のウェブサイト、店舗、メルマガなどの自社が発信するメディアを、タッチポイントとしてどのように配置していくか、再設計も必要になる。
更に、顧客に訴求し認知を得るためのTV、ネット広告、雑誌などのメディアや、顧客からの信頼を高めるための口コミサイト、マスメディアなどへの広報活動も非常に重要になってくる。
LINE、フェイスブック、レビューサイト、ブログやX(旧ツイッター)などのソーシャルメディアで自社の商品、サービスがどのように評されているのか、モニタリングも必要となる。
カスタマージャーニーを作成する過程の部門横断の議論を通じて、結果的に顧客に対するリーチも大きく広がるだろう。
ハッキング、情報漏洩、保険…
領域が広い情報セキュリティ
では、どのようにカスタマージャーニーを策定していくのか、「中小企業の情報セキュリティ対策市場」を例にシミュレーションしてみたい。
中小企業は情報セキュリティに対して、漠然とした、だが大きな問題意識を持っている。
人手不足も相まって、専門のIT部門が設置されておらず、多くの場合は、総務部門がIT部門も兼務している。セキュリティ担当の専門家など設置されていないことが多い。
こうした市場は現在小さく見えていても、中小企業が直面する課題の大きさから考えると、潜在的市場として大きいと考えることができる。