顧客が購入・継続使用に至るまでの動線を具体的なプロセスに落とし込んだものを「カスタマージャーニー」という。企業がカスタマージャーニーを策定する過程では、部門の壁を越えた議論が活発になるほか、社員のやる気がアップするというメリットも期待できるという。本稿は、青嶋 稔『売上目標を捨てよう』(インターナショナル新書、集英社インターナショナル)の一部を抜粋・編集したものです。
部門間の壁を越えた議論には
知見を共有する姿勢が必要
カスタマージャーニーとは、顧客がどのように関心抱き、関心事に対してどう情報を探索し、収集された情報からどのように意思決定し、商品・サービスを選び、購入してどんな使用体験をし、再購入・継続利用に至るのか……、という一連のプロセスを「旅」(ジャーニー)に見立てたものだ。顧客が購入・継続使用に至るまでの動線のことを指す。
今回は、数あるカスタマージャーニーのメリットのなかから2つピックアップして紹介する。
1:全社の部門連携での議論が活発になる
企業がカスタマージャーニーを描くとき、顧客がどのようなプロセスをたどり、関心を持ち、情報収集から意思決定をしていくのか、部門間の壁を越えて検討することになる。
顧客のタッチポイント(企業や商品との接点)は多様化しており、営業担当者以外にもコールセンター、サービス部門、ウェブサイト構築部門など、様々な部門が顧客に接している。自社の商品やサービス、企業ブランドの価値を維持し、向上させるためにはる接点における顧客体験を重視しなければならない。
ただ、これは言葉でいうほど簡単ではない。営業部門、ウェブサイト構築部門、コールセンターなど、どの部門も自部門の顧客接点でしか考えてこなかったのだから、顧客に対する捉え方が狭くなりがちなのだ。会社組織というのは、常に共通して実現したい姿を明確にしておかないと、部門間のセクショナリズムが強くなる。