戒厳令発令についても、韓氏は身内として尹氏を説得をするわけでもなく、一貫して非難を続けている。さらには野党に同調するような意味深長な発言までしており、韓氏のことを「表向きは保守の顔をしているが、実は、共に民主党と密通しているのではないか」と考えている韓国国民も少なくない。
尹氏はこれからどうなる?
日本への影響は?
一度決めると考えを曲げない尹氏の性格や、その後の経緯から考えて、今回の戒厳令発令はほぼ尹氏の独断に近い形で進められたものと考えられる。尹氏自身が周囲から孤立し、相当追い込まれていたのではないか。しかしこの状況で戒厳令が成功するとは思えない上、失敗すれば尹氏が政治生命の危機に立たされることは明らかで、一連の流れは腑に落ちない点もある。
いずれにせよ今回の一件で、保守や中道派の国民も、尹氏に対する強い怒りや不信感が一気に強まったことは否めない。おそらく尹政権の支持率はさらに下がり、今後の政局の不安定化は避けられないだろう。
韓国ではこれまで、歴代の大統領、特に保守派の大統領の多くが、任期途中や政権末期に何らかのスキャンダルによって失脚したり、退任後に逮捕・起訴されたりといった事例が繰り返されてきた。上述の通り、野党6党は弾劾訴追案を国会に提出済みで、可決されれば大統領の職務が停止されるほか、罷免される可能性もある。
もし尹大統領が罷免され、再び左派政権が成立すれば、日本にも大きな影響がある。日本製品不買運動「NO JAPAN」を主導してきた文在寅(ムン・ジェイン)前政権時とは対照的に、尹氏は日本との協力関係を強化してきた。そのため、2022年に尹政権が発足してからの数年間、日韓関係はずっと良好だった。しかし「共に民主党」党首の李在明(イ・ジェミョン)氏は、対日強硬姿勢で知られ、歴史問題で日本への非難を繰り返してきた人物だ。李氏が大統領になった場合、日韓関係は文政権時同様に冷え込み、厳しいものになることが予想される。