「紀州のドン・ファン事件」あす判決、浮上する「元妻の無罪」の可能性和歌山の資産家を殺害したとして、殺人罪と覚醒剤取締法違反罪に問われた須藤早貴被告の判決公判が行われる和歌山地方裁判所 Photo:PIXTA

「紀州のドン・ファン」と呼ばれた資産家を殺害したとして、殺人罪と覚醒剤取締法違反罪に問われた元妻の須藤早貴被告(28)の判決公判が12日、和歌山地裁で開かれる。決定打となる証拠がない中、検察側は先月18日、無期懲役を求刑。須藤被告は最終意見陳述で「ちゃんと証拠を見て判断してほしい」と裁判員らに呼びかけ、無罪を主張した。(事件ジャーナリスト  戸田一法)

6000万円の窃盗被害も
「いい経験」と豪語

 被告は2018年5月24日、何らかの方法で致死量の覚醒剤を野崎幸助さん(当時77)に摂取させ殺害したとされるが、起訴状には具体的な殺害方法などは明示されていない。検察側は当初から、証人尋問などで状況証拠を積み重ね「野崎さんが自ら覚醒剤を摂取する理由はなく、被告以外に犯人はいない」と立証する方針だったと見られる。

 公判の説明に入る前に、なぜ野崎さんが「紀州のドン・ファン」と呼ばれているのか説明したい。ドン・ファンはスペインの伝説上の男性で、稀代のプレイボーイとされる。自ら紀州のドン・ファンを名乗り、自伝『美女4000人に30億円を貢いだ男』『野望編・私が「生涯現役」でいられる理由』を上梓していた。

 筆者の後輩である全国紙社会部デスクによると、野崎さんは和歌山県田辺市の酒屋に生まれ、金融や不動産、酒類販売などの事業が成功。約2億円を納税して高額納税者番付に名を連ねるなど、地元では資産家として知られた。