動機は十分と検察
犯人の立証なしと弁護側

 論告求刑公判が開かれたのは同18日。検察側は論告で「事件があった時間帯、被告は野崎さんと2人きりで、覚醒剤を摂取させる機会が十分にあった」と強調。また愛犬のお別れ会や通院などを予定しており、自殺の可能性もないと断じた。

 動機については結婚後に毎月100万円を受け取っていたが、アダルトビデオ出演が知られると離婚される恐れがあったとし、その前に死亡すれば億単位の遺産が手に入ると考えたと指摘した。

 一方の弁護側は、被告が覚醒剤の致死量や具体的な摂取方法を検索した記録などはなく、犯人と断定するには立証が尽くされていないと反論。野崎さんから受け取る金銭以外に収入がない被告が20万円を自分の口座に入金した形跡があることから、覚醒剤の入手を依頼されたとする供述は信用できると述べ「疑わしいというだけで、間違いなく犯人とは立証されていない」と無罪を主張した。

被告以外に
摂取が可能な人物は?

 それでは、判決の行方はどうなるのか。

 22回の公判には計28人の証人が出廷し、被告本人も詳細に答えている。全員が真実を述べたと仮定すればだが、被告が野崎さんから依頼されて入手した「白い塊」は覚醒剤ではなかった可能性がある。

 被告の前に婚姻関係にあった女性は、野崎さんは健康意識が高く「薬物に否定的な人だった」と証言。経営していた会社の従業員や知人も自殺の兆候を否定した。一方、被告は愛犬の死後「死にたい」と繰り返していたと証言した。

 そもそも今回の焦点は「どうやって覚醒剤を飲ませたのか」のはずだが、一切明らかになっていない。というのは、覚醒剤は苦みが強烈で、食べ物や飲み物に混ぜても飲み込めるレベルではないとされる。あり得るならばカプセルに混入する方法だが、その成分も胃からは検出されていないようだ。

 証言からは自殺の可能性はなさそうに見えるが、一方で身体が自由にならないもどかしさを感じていた発言もあったとされる。また被告に依頼する以外にも、覚醒剤を入手する方法はゼロではないだろう。

 検察側は犯行があったとされる時間帯は家政婦が外出しており「第三者が侵入した形跡はなく、被告以外による犯行は考えがたい」と主張した。だが、それでは野崎さんが自ら飲み込んだという可能性は100%ありえないという根拠はどこにあるのか。もちろん、被告が犯人と断定している検察側は示していない。

 裁判員の判断が注目される。