高橋くん:「……え?」

 高橋くんは一瞬驚くと、少し落ち込んで言いました。

高橋くん:「ただストレッチするだけでも、85%も挫折してるんですね。習慣化って、そんなに難しいことだったとは……。

高橋くん:「そりゃあ今まで三日坊主だったのも、無理はない気がしてきたなあ」

 現実の厳しさを知った高橋くんを元気づけるように、博士は熱いコーヒーの入ったマグカップを渡しました。

博士:「その感覚が重要だよ!今見た通り、習慣化って実際はすごく難しいんだけど、なぜかみんな『これくらいできる』と思ってしまうんだよね。だから何も対策せずに始めて、挫折に終わる。でも『習慣化は難しいことだ』と納得できれば大丈夫」

 博士はキリッとした表情を浮かべました。

博士:「対策は既に、研究し尽くされているから」

大人は堕落も向上も自分次第、
「昔はできた」という錯覚に迷うな

高橋くん:「でも考えてみれば不思議ですよね」

 高橋くんは言いました。

高橋くん:「学生の頃って、毎日みんな何時間も部活や受験勉強をしているのに、大人になるとたった数分のストレッチすら続けられないなんて」

博士:「ああ、それは全然違うことなんだよ」

 コーヒーで火傷したのか、博士は舌足らずな話し方をしました。

博士:「たとえば陸上部の学生がみんな毎日ちゃんと走るのは、なんでだと思う?」

高橋くん:「速くなりたいから、ですか?」

博士:「まあ、そういう人もいるね。でも、『みんなが』ちゃんと走っている理由はそうじゃないんだ。本当の理由は、『サボると後で嫌な思いをするから』」

高橋くん:「あ、なるほど」

 高橋くんは学生時代を思い出し、納得しました。

 部活をサボると先生に怒られたり、ちゃんと部活に出ていた他の学生から蔑みの視線を向けられたりするのです。

博士:「『走りたくない』という人をも行動させる強制力。「学生時代にはこれが働くけど、大人になるとそれがなくなる。」

高橋くん:「サボっても誰にも何も言われないから、大人は『走りたくない』と思ったら走らない」

博士:「おお、なるほど!大人になってからの筋トレや勉強って、自分の意志で始めますもんね」