売り手有利の市場環境で、揺れ動く学生の意識
売り手有利といわれる昨今、内定者の懇親会に参加しながら、10月1日の内定式直前に「内定を辞退します」と言ってくる学生も少なくない。あるいは、「配属ガチャ」や「ゆるブラック」が話題になったりしている。これは、学生がわがままになっているというよりも、学生の意識が揺れ動いているからではないか。企業側には、そうした“いまどき”の学生にどう対応するかが問われている。
高村 昨年度(24卒)の調査から、学生に対して、“キャリア観についての質問”を設けているのですが、24卒も25卒も、「新卒で入社した企業にずっと勤め続けたい」が5割弱を占め、「複数の組織でキャリアを磨いていきたい」は約25%と、「入社した企業にずっと」の半分ほどです。
また、仕事観について最も多いのは「様々な仕事を経験してマルチな人材になっていきたい」というもので、「ひとつの仕事を続けてエキスパートになっていきたい」は全体の3分の1程度です。これも24卒と25卒でほぼ変わりません。
キャリア観と仕事観は必ずしも一致するものではありませんが、「入社した企業にずっと」も「マルチな人材」も、安定志向という点で共通すると考えられます。一方で、「キャリアを磨いて」や「エキスパートに」という志向が強い学生は自律的なキャリア意識が高く、就活においても積極的に動いている層であり、職種別採用が刺さっていると思われます。
実際、従来のコース別採用からさらに細かく職種を分けて募集をかけたところ、応募者が増えたという企業もあります。職種別で募集していることを学生が好意的に思い、志望順位を上げたのでしょう。
なお、企業側に、職種を限定した採用の実施状況を聞いたところ、大手企業では「コース別採用(総合職・一般職など)を行っている」が47.1%、「職種限定採用(部門・キャリアなどを指定)を行っている」が32.0%と、対応が進んでいます。中堅・中小企業は、まだ「進んでいる」わけではありませんが、職種別採用の実施は、40社(=学生1人の平均エントリー社数)の中に入るための施策のひとつといえるかもしれません。