日本銀行は「質的・量的金融緩和」の導入を決定し、毎月7兆円超の国債買い入れを発表した。買い入れる国債の平均残存期間を7年程度に延長すると決めたが、これで日銀の長期・超長期債買い入れが巨額になることが判明し、長期金利はいったん急低下した。
しかし、買い入れ枠拡大で、国債の流動性低下などが懸念されたことから、円債市場のボラティリティ(価格変動幅)は急拡大し、結果として長期金利は急上昇した。
こうした状況を見て、「市場との対話」を重要視する日銀は、すかさず国債買い入れオペの運営見直しを発表した。「日銀オペの落札水準に関する不透明感」が高まっていたことが一日の取引時間内のボラティリティの上昇につながっていただけに、円債市場からすればまさにベストな対応だった。
今後の市場動向如何によっては、1回の買い入れ額のさらなる細分化というチューニング(調整)も可能であり、日銀の買い入れ額が大きい10年国債の利回りの変動幅が落ち着くとの期待が高まった。市場参加者の間では今後1~2年における物価の大幅上昇が期待されていないことからも、10年債利回りは0.5%前後といった低位で安定する可能性が高い。
他方、20年債などの超長期国債利回りは、今後も落ち着きどころが定まらないだろう。日銀オペによる超長期ゾーンの月間買い入れ額は、保険会社の毎月の超長期国債の純買越額に相当するものの、保険会社がこれまで同様に超長期国債を買い越すかどうかは不明だ。
あまりにも超長期国債の利回りが低下するようなら、為替ヘッジ付き外債などでの運用を増やすと予想され、すでに複数の保険会社が外債投資積極化をうかがわせるような計画を明らかにしている。日銀が買い入れ額を増やせば利回りが低下すると考えるのは早計だろう。
低金利局面の中で、超長期国債の投資家層は地域金融機関などに広がっている。こうした投資家の買いが超長期国債利回り上昇を抑えるとの期待もある。