地球写真はイメージです Photo:PIXTA

人生に「目的」を持つことで、日々のタスクも管理しやすくなる。しかしなかには、人生の目的を考えるのが苦手な人もいるだろう。タスク管理について長年模索してきた著者が、宇宙的観点から紐解いた人間の存在価値や、死を意識した際に浮かび上がる後悔、そして柔軟な人生デザインの重要性などから人生の目的を設定するヒントを伝授する。「人生計画書」を作成し、最初の1歩を踏み出そう。※本稿は、北村拓也氏『「いつも時間がない人」のためのタスク管理の結論』(総合法令出版)の一部を抜粋・編集したものです。

存在しているだけで価値がある?
生物としての生きる目的を知る

 ウェルスク(編集部注/ウェルスク:ウェルビーングスクラムの略。自己管理と生産性向上のためのフレームワーク)の計画書の1つ目である「人生計画書」は、

(1)人生目的:残りの人生で成し遂げたいこと
(2)人生ゴール:人生目的を達成するための最終的な目標点
(3)ビジョン:人生目的を達成したときのあるべき姿

 の3つで構成されます。人生計画書は一度作成したら完成ではなく、日々の状況や気づきに応じて改善していきます。

 そしてこの計画書を定期的に作成する活動が「人生デザイン」です。

 人生目的とは、残りの人生で成し遂げたいことを示します。これは「生物としての生きる目的を知る」「人間としての人生目的を知る」「まだ知らない自分を探求する」という3段階に分けられると私は考えています。それぞれの段階は、私たちが自身の存在意義や役割を深く理解し、それに向かって進むための指針を提供します。

 私たちの宇宙視点での生きる目的は、「生きていることそのもの」にあると言えます。

 この根源的な問いに対して、マサチューセッツ工科大学(MIT)の物理学者ジェレミー・イングランド氏が提唱する理論は、画期的な視点を提供しています。彼の理論は、エネルギーをより効率的に分散させる(エントロピーを増大させる)手段として、生物が無生物から進化した可能性を示唆しています(1*)。

(1*)…S.AKIYAMA進化論を「再定義」する物理学者、ジェレミー・イングランドとの対話Available:WIRED

 エントロピーとは、物理学において物事が無秩序になる傾向を表す概念です。例えば、熱い紅茶が自然に冷めていく過程はエントロピーの増大を示しています。逆に、紅茶が自然と温まることはありません。イングランド氏の研究は、この物理法則を生命の起源に適用し、宇宙のエネルギーを効率的に分散させるために生命が進化したと説明しています。

 この考え方が正しいとすれば、宇宙のエネルギーを分散させるという役割が、私たち人類の「目的」となります。宇宙にとって、私たちは生きているだけでその目的を果たしており、それだけで価値があると言えるのです。つまり、私たちは存在しているだけで生きる目的を達成し役割を果たしている。そして同時に、他者の命やエネルギーを削ることをしてはいけないと解釈できます。

 したがって、私たちは他者を害さない範囲で、自分自身の生きる目的を自由に定義することができるのです。