金融界の代表的な気候指標が「脱炭素化の障壁」となっている2つの理由写真はイメージです Photo:PIXTA
*本記事はきんざいOnlineからの転載です。

気候指標の二つの課題

 長い人生を生きていく上で将来志向は重要だ。そしてそのことは、本稿で取り上げる気候指標においても同様である。

 現在、金融の世界で代表的に使用されている気候指標には、炭素強度(Carbon Intensity=カーボンインテンシティー)やWACI(Weighted Average Carbon Intensity=加重平均カーボンインテンシティー)がある。炭素強度は、企業の年間売上高当たり(国の場合はGDP(国内総生産)当たり)の炭素排出量を指す。

 炭素強度をポートフォリオにおける保有割合で加重平均したものが、WACIである。WACIは、ポートフォリオの炭素排出量を示すファイナンスド・エミッション(投融資先の炭素排出量)の計算に使用される。

 これらの指標の利点は、すでに標準化されており、すべての資産クラスに適用できることである。16年の気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)で一般的となって以降、気候指標の主流となっている。しかし、これらの指標は、二つの理由で脱炭素化の進展の障壁となっている。

 一つ目は、これらの指標は過去の一時点のデータであり、将来の脱炭素化の大きさを示すデータではないことである。二つ目は、多くの場合セクターごとの特性が調整されていないため、産業構造上、高炭素排出となるセクターは特に悪く見えることである。