ウクライナは早速、射程距離が300kmの長距離ミサイル「ATACMS」をロシアのブリャンクス州の軍事施設に向けて発射。英国も同様に、射程距離250kmの巡航ミサイルの使用を許可し、使用されました。さらに「ATACMS」で、ロシアのクルスク州の航空基地も攻撃しています。

 フランスのジャン=ノエル・バロ元外相(発言当時は現役)は、24年11月23日に放映された英BBCのインタビューで、ウクライナ支援に「レッドライン(越えてはならない一線)を引くべきではない」と述べ、フランスも長射程兵器のロシア領内への使用を容認する方針を公表しました。

 仏紙『ル・モンド』は、フランスと英国が、ウクライナへの軍隊や軍事企業の関係者の直接派遣について議論していると報じ、ポーランドや北欧諸国は義勇軍を組織して、とにかくトランプ氏に無理矢理停戦させられる前にウクライナの領土をなるべく多く取り返すことを、NATO軍の作戦として提案しています。

 消極的と言われたドイツでさえ、民間人を避難させるバンカーやその他の地下施設のリストを作成していると発表。また、攻撃があった場合に国民が緊急避難所を見つけられるアプリをリリースする予定です。日本でも、地震の際に避難所をすぐ見つけられるようなアプリがありますが、ドイツでは核戦争に備えるアプリが作られ、配布されているのです。

米国+NATOで始まる
ウクライナ利権の最終争奪戦

 また、NATO軍事委員長でオランダ海軍のロブ・バウアー提督は24年11月24日に演説し、 NATO加盟国はロシアや中国などの国々からの脅迫を受けにくくするために生産・流通ラインを調整する必要があると警告を出しました。

 NATOだけではありません。米国でも、元国連核査察官のスコット・リッター氏、シカゴ大学教授のジョン・ミアシャイマー氏など錚々たるメンバーが、メディアや講演会において、トランプ大統領就任までに、バイデン+NATOで「ウクライナ領土を少しでも増やしておく」作戦が進展しているとの認識を示しています。

 実際、ウクライナ軍の元総司令官で現在は駐英ウクライナ大使のヴァレリー・ザルジニー将軍も、「第三次世界大戦は24年に始まったとみなすことができる」と発言しています。

 翻って、ロシアも負けてはいません。プーチン大統領はロシアの核ドクトリンを改め、核兵器使用の基準を緩和するとともに、24年11月21日に「オレシュニク」という極超音速のミサイルをウクライナ東部の都市ドニプロに撃ち込みました。「オレシュニク」は速度マッハ11で、現行のどの迎撃ミサイルシステムでも打ち落とすことは不可能だとされています(実際には米軍はミサイルを乗っ取るジャミング技術をもっているので、とりあえず、ロシアに発射させてどんなものか観察しているという専門家の見方もあります)。

 一方で、ロシア国内でも核シェルターの増産を命じるなど、NATOが介入したら核戦争も辞さないという態勢を作り始めました。すでに、ロシアの最初の攻撃目標はポーランドの米軍ミサイル基地だという指摘まであります。