江本 大変で地道な作業ですね。

濵渦 はい。下部組織や外郭団体は、監理団体、関連団体まで含めると無数にありますから、全容を把握するまでが大変でした。

 とにかく東京じゅうの都の関連施設を見て回りましたよ。いまでも私が東京都のことをいちばん知っているという自負がありますが、それは、このときの経験があるからですね。

江本 回ってみて、実態はいかがでした?

化粧して指輪をつけた女性職員が
視察の時だけ発掘作業のフリ

濵渦 組合対策や議会対策という言葉のもとに、多くのムダがありました。

 実態を知れば知るほどめちゃくちゃでしたね。税収がいくらあったところで、この放漫体質では追いつかないだろうと、すぐに思いましたから。

 たとえば江東区の夢の島にある東京都立第五福竜丸展示館(編集部注/1954年3月1日、アメリカがビキニ環礁沖で行った水素爆弾実験の近くにいて被曝した、乗組員23名の遠洋マグロ漁船・第五福竜丸を展示する施設)。

 その施設のなかには教育委員会から職員が5人も派遣されているけれど、何もしていない。なかに部屋をつくって組合活動をやっているだけなんです。そこに予算が数千万円もついていた。そういうことを逐一調べていったんです。

 ほかにも多摩市には考古遺物などの調査研究や資料の収集をしている東京都立埋蔵文化財調査センターがありました。そこでは遺物の発掘のために数千万円の予算が確保されていました。

 でも、視察に行ってみると、化粧して指輪までつけたおばちゃんたちが、その日だけ発掘作業をしているふりをしている。

 明らかにおかしいから所長に問いただすと、「地元対策なんです」と言われました。有力な地元の議員の紐つき案件だったりするわけです。

濵渦 東京都は財政難が問題になっているのに、そういう野放図に予算がついているものがたくさんあり、ムダの温床になっていましたね。

 それだけでなく、そもそも経営感覚がいっさいない。たとえば都の施設には卓球台があって、利用料がひとり100円で、団体で借りると200円に設定されている。そうすると、四人で遊ぶときは団体で借りて200円しか払わないわけです。こういういい加減な料金設定をした事業運営が、さまざまなところで行われていました。

 しかも、調べると、たいてい組合対策なんです。

 だから都民のための施設なのに利用する都民のことはまったく考えない運用がされていました。