人が来るはずのない曜日に
開館していた文学館
江本 ひどい話ですね。
濵渦 目黒区の駒場公園のなかには東京都近代文学博物館(編集部注/加賀藩主の旧前田侯爵家の洋館を活用した文学館、1967年に開館し2002年に閉館した)がありました。
当時の近代文学博物館の来客数を見ると、開館しているのに、火曜日だけは、来客がいない。
不思議に思って調べると、これがひどい話で、目黒区が運営する駒場公園が火曜日が休みだから、そもそも公園のなかにある博物館に入れない(笑)。
それを知りながら、職員たちは、その日を休みにせずに営業日に設定して楽をしているわけです。民間企業ならありえないでしょう。こんなおかしなことがまかり通っていたんです。
東京都が運営する動物園には上野動物園と多摩動物公園の2つがありますが、当時はどちらも同じ曜日を休みにしていました。
普通なら集客を考えて、ずらすべきじゃないですか。そういう意識がまったくありませんでしたね。
当時は視察でどこかに行くたびに問題点を見つけて帰ってきたから、石原さんから、「お前は1日にひとつ獲物を咥えて帰ってくるなあ」と言われていました。
江本 狩猟を趣味にしている濵渦さんらしいですね(笑)。
親分肌の都労連委員長とは
極端同士で話が合った
――石原都知事は就任からわずか1カ月後の5月、財政再建プランの策定に着手する。7月には4年間で5000人の職員削減や職員給与4%カットなどを盛り込んだ第一次財政再建プランを策定。濵渦は財政再建のために奔走することになる。
江本 都庁職員の給与4%カットをやるわけですが、これはすんなりOKされなかったわけですよね。
濵渦 職員の組合である都労連(東京都労働組合連合会)の委員長室にひとりで乗り込んで交渉しましたよ。
当時の委員長の矢澤賢さんは全共闘上がりの極左の活動家だったけれど、親分肌の人で、交渉相手としては文句のない相手でした。
私はいわば極右ですが、極左と極右の極端同士、話が合ったんです。
相手も給与カットに対抗して始業時からの1時間のストライキを打ってきたけれど、こちらとしては、その時間分、職員の給料を払わなくてすむから、内心では、「どうぞストをやってください」と思っていました。
江本 最終的に妥結したわけですね。
濵渦 1999(平成11)年11月17日の団体交渉で職員給与の削減策について合意しました。2000(平成12)年度から2年間、全職員の給与を4%、期末勤勉手当は8.6%削減するという内容で合意しました。都の職員の給与がカットされたのは初めてのことでした。